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心のケアと癒しに役立つ臨床心理のここだけのお話

心理カウンセリングやセラピーをしている中で、心の悩み、成長、癒しに関するいろんなトピックが出てきます。このコラムの中でその事をより多くの方にシェアして、皆様のお役に立てれればと思っております。

Updated on 2023/12/ 19

Vol.28 : 子育てに悩んでいるアナタへ② ~効果的なコミュニケーションとは

今回のコラムでは、前回の第27回「子どもの発達」に続き、「コミュニケーションの重要性」についてご説明します。

コミュニケーションに関わる脳の3大原則

コミュニケーションとは、個人の意思伝達能力のことで、情報を受け取ったり渡したりしている状態を指します。以下は、脳の特性から人間が無意識に行っていることで、これらはコミュニケーションに大きな影響を及ぼします。

  1. 「脳は空白を埋めたがる」
  2. 「脳は1つのことしか集中できない」
  3. 「脳は楽しいことを求め、痛みや苦しみは避けたがる」

この3つの特性を踏まえて、効果的なコミュニケーションの取り方についてご説明します。

効果的なコミュニケーション①
「相手との会話では、たくさん質問や確認をしよう。オウム返しもGood!」

脳には分からないこと(空白)を埋めたがるという特性があります。例えば、人は「3+4=□」という計算式を目にすると、自然とこの「□」の中に何かを入れようとします。計算式のように絶対的な答えがある場合は良いのですが、そうでない場合はどうなるのでしょう。別の例を挙げて説明しましょう。

「車」というトピックについて母さんとお子さんが話をしても、もしお母さんの好きな車がミニクーパーで、お子さんの好きな車がスポーツカーの場合、2人の間にはたくさんの空白が生まれます。つまり言語が同じでも、頭に描くものはまったく異なる可能性があるということです。

この空白を調整していくのがコミュニケーションです。効果的なコミュニケーションは質問や確認です。上記の2人であれば「どんな車が好きなの?何色がいい?」など、互いのイメージを重ね合わせることができるような具体的な質問がよいですね。相手の言っていることを繰り返す「オウム返し」も効果的です。例えばお子さんが「幼稚園でお友達のパパが乗ってた車を見た」と言ったら「お友達のパパが乗ってた車を見たの?」と返すと、「うん。イタリアのスポーツカーで真っ赤だった」などと、相手が空白部分を補充してくれたりします。簡単なようですが、意外にもこれをやっている人は少ないのです。実際には会話において、勝手に自分の考えだけで進めていくことが多く、それがコミュニケーションがうまくとれない原因であったりします。

特に相手が子どもの場合、大人は空白を自分たちの経験から勝手に埋めてしまいがちです。大切なことは、子どもが言った言葉をきちんと確認していくことです。決めつけてばかりいると、子どもが心を閉ざしてしまうこともあるので、意識して空白を埋めるコミュニケーションを取るようにしてくださいね。

効果的なコミュニケーション②
「今と過去の出来事は、切り離して考える」

脳には1つのことしか集中できないという特性があります。つまり、何か嫌なことを思い出すとずっとそれにとらわれてしまいます。嫌なことが起きた時に、それに関連した過去の嫌な出来事が雪だるま式に頭に浮かんできた経験はありませんか?これは脳が集中していることだけの情報を求め、そのほかの情報は排除してしまうからです。

ここで大事なポイントは「何に」集中するかです。子どもが何か悪いことをした時に、過去の同じようなことを思い出して、怒りを増幅させるのはやめましょう。その日、その場で起きたことと、過去は切り離してください。叱ったり怒ったりするのは、「今起こっていること」に対してだけと心得ておくと、過去のことを引き合いに出して相手をさらに責めたりすることを防ぐことができます。

効果的なコミュニケーション③
「楽しい・うれしい気持ちをベースにして伝える」

脳は基本的に楽しいことを求め、痛みや苦しみは避けたがる傾向にあります。ですから「遊び」と「宿題や勉強」であれば、遊びを優先させてしまうのは当たり前のことなのです。

もちろん、宿題をやらずに子どもが遊んでいればお母さんが怒るのは当然です。ただし、ここでただ叱ったり怒鳴ったりしても、脳は不快になるだけです。このような場合の効果的なコミュニケーションのポイントは、子どもと遊び感覚で接してみることです。例えば、宿題の紙を家のどこかに隠し「問題を解きながら宝さがしゲームをしよう」と提案してみるというのもよいですよね。楽しい、うれしいという感情が生まれれば、それは脳にとってご褒美となります。

子どもにかける言葉も、「より」「もっと」「さらに」「だんだん」といった言葉を前提として使うのも良いです。例えば、「宿題を終わらせたら遊んでいいよ」と言うより「宿題を終わらせて遊んだらもっと楽しいよね」といった具合です。また「もし○○だったら」という表現もお勧めで、勉強が苦手で学校に行きたくないという子どもには、「もし勉強が楽しくなったら学校でどんな風に過ごせると思う?」などという切り口で話しをして、子どもの気持ちや感情をきちんと引き出してあげましょう。

次回からは、「子育てQ&A」をシリーズでお送りします。

Updated on 2023/12/ 19

皆さんのご意見、ご相談等ございましたら以下までご連絡ください。

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Columnist's Profile

インターナショナル ライフサイクル ファミリーセラピー(International Lifecycle Family Therapy Inc.)

CA州心理士免許(LMFT)と博士号を持つ経験豊かな2人のセラピストによる心理カウンセリングオフィス。多くの方々のより良い心の健康を目指し、個人、カップル、家族の心理セラピー/カウンセリングを日本語および英語で提供している。仁科盛次郎(心理療法士、LMFT#50945)および菱谷有希子(心理療法士、LMFT#53262)はCA州公認のマリッジファミリーセラピストで、専門は家族・カップル間のコミュニケーション、異文化や多文化における問題、思春期における心理やアイデンティティ問題、薬物依存治療など。多種多様な家族療法を取り入れたアプローチや、物の見方を変え解決方法の発見へと導くアプローチ、催眠療法などの潜在意識セラピーを提供。また、両者ともに移民難民、性犯罪にかかわる青少年更生、薬物リハビリテーション施設での経験を持つ。大学院講師としての活動及び後輩育成にも精力的に取り組んでいる。Youtube「カリフォルニアから心の癒しチャンネル」にて心にまつわるビデオ公開中。

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