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心のケアと癒しに役立つ臨床心理のここだけのお話
心理カウンセリングやセラピーをしている中で、心の悩み、成長、癒しに関するいろんなトピックが出てきます。このコラムの中でその事をより多くの方にシェアして、皆様のお役に立てれればと思っております。
Vol.31 : 心理セラピストが回答!「子育てQ&A」~子どもが勉強しない!どうすればいいの?
- Q
-
夫の赴任に伴い、3年前からアメリカに住んでいます。中学生の息子2人は現地校に通っていますが、どちらも成績がかんばしくなく、あと数年で帰国することもあってとても心配です。どうしたら勉強に身が入るようになりますか?何か良い方法はありますか?
- A
-
勉強嫌いの理由は「つらい」から
長年、アメリカ在住の心理セラピストとして活動していますが、意外にもお子さんの「勉強」についてご相談を受けることが多いです。特に、いわゆる駐在組のお母さんからご連絡をいただくことが増えています。ご質問者さまのように、いずれ日本に帰国することが決まっている場合、例えば駐在期間が3~5年とすると、親御さんとしてはその先を見据えて行動します。もし帰国する頃にお子さんが中学生なら、当然高校受験を視野に入れ、アメリカにいてもしっかり受験対策をさせたいと考えるでしょう。実際、現地校に加え、平日または週末の日本語補習校に通っているお子さんは多く、さらに私塾に通っているケースもざらです。お子さんにしてみれば、言語環境の異なる2つの学校に行き、さらに塾まで。しかも、日本語補習校や塾がたくさんあるカリフォルニアでは、これは一般的なのですから本当に大変だと思います。
さて、ここからが本題ですが、勉強に身が入らないお子さんにとって、学ぶことは「とてもつらい」のだと思います。日本もそうですが、アメリカでは小学校半ばぐらいから、学校の勉強が急に難しくなってきます。親御さんもお子さんの成績が落ちたり、宿題に手こずったりしている様子を見ると、つい「ちゃんと勉強しなさい」と応援という名のプレッシャーをかけてしまいがちです。このような対応の結果として、子どもの脳には学ぶことは「やっぱりつらい」と刻み込まれてしまいます。脳には不快なことから逃れたいという特性がありますから、必然的に「勉強したくない」という言動につながります。さらに恐ろしいことに、社会人になった時にも悪影響が出ることがあります。仕事をしていて「つらい」と感じてしまうと、プロジェクトをうまく進められない、ミスが多くなる、場合によっては、ある日突然辞職するといった事態にもなりかねません。
「なんでできないの!」から「すごいね!」へお子さんに宿題を教えていて、つい「なんで分かんないの!」と怒鳴ってしまったことはありませんか?耳の痛い親御さんもいらっしゃると思います。お子さんにとって「勉強は不快」を覆すには、親御さんの接し方がとても重要になってきます。込み上げる怒りをぐっとこらえ、問題を1問でも解けたら「すごいね!」とお子さんを褒め、一緒に喜んでみましょう。そういう成功体験があると、脳にもポジティブな体験を与え、ひいてはマインドセットも変わります。
幼稚園生ぐらいから何度も学ぶことに関する成功体験を味わうと、子どもは自主的に勉強するようになります。大切なことは、「学ぶ楽しさ」を教えること。家庭での学びが楽しければ、就学しても学ぶ意欲が高まり、記憶力もよくなります。これが成績向上につながるのです。つまり「学ぶことは楽しい!」を脳にインプットできればよいのです。以下に具体的なアプローチ方法を記載しました。ぜひ今日から試してみてください。
お子さんと一緒に宿題をするお子さんの年齢にもよるのですが、親御さんも一緒に勉強してみましょう。現地校でも小学生レベルであれば、共に宿題に取り組めると思います。中高生ならどんなことを勉強しているのか、教科書や宿題を見せてもらって話を聞いてあげるだけでもいいでしょう。場合によっては家庭教師を雇う、塾に通うという提案もできます。
好きな分野から学びに対するポジティブイメージを作る誰にでも興味のある分野があります。まずは興味のあるところから広げていきましょう。例えば、数学はきらいだけど英語(国語)は得意という場合、英語で数学の用語を調べるなど、他の教科との共通点を探します。歴史が好きなら、お子さんが好きな偉人を聞いて、その偉人が何を勉強していたかを想像しお互いの考えを伝える。漫画やドラマを利用してもよいですね。楽しくワクワクする方法で、学びへのポジティブイメージを上げていきましょう。
学校の教科以外でも、ゲームが好きなら自分で作ってみるなど、一見遊びのように見えることでも否定せず、それをきっかけにいろいろなことを学ぶ機会を作ってあげてください。また、アメリカには多彩なサマーキャンプもあるので、気になるキャンプに参加して興味のある分野を探してみるのもよいと思います。
上記に挙げた方法は、小さいお子さんだけではなく、中学生や高校生、そして大人にも有効です。私自身も「心理学が大好き」から始まり、学ぶうちに統計学や経営学など自分が興味のない分野にもつながりました。結果的にあまりプレッシャーを感じずに、自ら積極的に学んでこれたのです。大人になると分かるのですが、楽しい!ワクワクする!といった感情が伴う学びは、決して苦痛ではないのです。ぜひ、学ぶことの素晴らしさと、それに付随するポジティブな感情をお子さんに体験してもらってください。
次回は、子どもの勉強問題の裏に隠された、親御さんの複雑な心理についてご説明します。
Updated on 2024/ 3/ 29
皆さんのご意見、ご相談等ございましたら以下までご連絡ください。
Columnist's Profile
- インターナショナル ライフサイクル ファミリーセラピー(International Lifecycle Family Therapy Inc.)
CA州心理士免許(LMFT)と博士号を持つ経験豊かな2人のセラピストによる心理カウンセリングオフィス。多くの方々のより良い心の健康を目指し、個人、カップル、家族の心理セラピー/カウンセリングを日本語および英語で提供している。仁科盛次郎(心理療法士、LMFT#50945)および菱谷有希子(心理療法士、LMFT#53262)はCA州公認のマリッジファミリーセラピストで、専門は家族・カップル間のコミュニケーション、異文化や多文化における問題、思春期における心理やアイデンティティ問題、薬物依存治療など。多種多様な家族療法を取り入れたアプローチや、物の見方を変え解決方法の発見へと導くアプローチ、催眠療法などの潜在意識セラピーを提供。また、両者ともに移民難民、性犯罪にかかわる青少年更生、薬物リハビリテーション施設での経験を持つ。大学院講師としての活動及び後輩育成にも精力的に取り組んでいる。Youtube「カリフォルニアから心の癒しチャンネル」にて心にまつわるビデオ公開中。
International Lifecycle Family Therapy Inc.
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