コラム

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

2020年 3月 24日更新

第57回 : コロナウイルス対策による緊急措置。ビザの面接はどうなるの?

Q

現在、Eビザでアメリカの日系企業に勤めています。もうすぐビザが切れるので、3月末に日本のアメリカ大使館で更新のための面接予約をしていたのですが、コロナウイルス対策に伴いキャンセルされてしまいました。再開の目処もなく、このままでは不法滞在になってしまうのではないかと心配しています。また、一旦出国して日本で待つにも、今の状況ではいつアメリカに入国して仕事に復帰できるか不安なので、先の見えない状況下での国外への渡航は避けたいところです。どのように対応すれば良いですか?

A

日本のアメリカ大使館は、2020年3月19日より(緊急の場合を除き)非移民ビザの面接を一時的に停止する発表を行いました。これにより、3月19日以降の非移民ビザの予約がキャンセルとなりました。

しかし、あなたの場合は、Eビザの期限切れがアメリカでの滞在資格を失うということにつながるわけではありません。あなたがどれくらいの期間までアメリカに滞在できるか否かを管理しているのは、I-94 です。I-94 はオフィシャルサイトで確認することができます。ただし、このサイトも稀に正確でない場合もあるので、パスポートに貼られている最も新しい入国スタンプを確認してください。通常、特殊な場合を除いて、入国から2年間の滞在資格が与えられています(ここで言う特殊な場合とは、例えば、入国の際、その時点でパスポートの有効期限が半年以下の場合や、I-94の有効期限がパスポートの有効期限に合わせてある場合があります)。もし、I-94に正確な有効期限が記されていない場合は、このI-94の訂正の申請ができます。一般的には、この訂正を行う最寄りの移民局 に赴くことにより申請しますが、LA地域に在住の場合は、Eメールで訂正のリクエストの申請を行うことができます。

上述のように、I-94 が滞在資格の有効期限を管理しているのであって、ビザの有効期限とは関係ありません。すなわち、仮にパスポートに貼られているビザの有効期限が切れていたとしても、I-94 の有効期限が切れていなければ、米国内に合法的に滞在していることになります。また、このI-94の有効期限が切れしまいそうな場合でも、ほとんどのケースが、アメリカ国内で延長が可能です。例えば、Eビザの場合、移民局にI-129の申請書を提出することにより、2年間の延長が可能です。これによって、アメリカ国外に出ることなく、合法的に働き続けながら、今回の事態の終息を待つことができます。さらに、このI-94の延長申請は、現在のI-94の有効期限が切れるまでに申請を行えば、もし現在のI-94が切れても、審査の結果が出るまで合法的にアメリカに滞在して就労を続けることができます。

また、今回の全米規模のコロナウィルス対策によって、自分が勤めている会社が資金的に充分な給与を支払うことができないことも考えられます。このような理由から、既定の給与が支払われていないためにステータスを維持することができないものの、社会的に重要な職務なので仕事を辞めて日本に戻るわけにいかないといった、やむを得ない事情が発生するケースも今後多々出てくる可能性があると考えられます。移民局の(移民局だけではないですが)規定の中に “Nunc Pro Tunc” という例外規定があります。これは、「申請者本人のコントロールの及ばないやむを得ない事情」により不法滞在になってしまったような場合に、この「やむをえない事情」の説明を行うことにより、オーバーステイ等を免除してもらう申請方法です。ただし、各々の案件が、ここで言う「申請者本人のコントロールの及ばないやむを得ない事情」に該当するか否かは、各審査官の裁量に委ねることになります。今回のコロナウィルス対策により、不法滞在となってしまう場合が、この「申請者本人のコントロールの及ばないやむをえない事情」に該当するか否かは、今後の移民局の対応次第になりますが、恐らく、個々のケース毎の状況により判断される可能性が高いと考えます。

そこで、単にコロナウィルス対策に巻き込まれたから仕方が無いと考えるのではなく、前出の申請方法を含め、制限された状況の中でもできる限りの対策を講じておくことが賢明であると言えます。例えば、「申請者本人のコントロールの及ばないやむをえない事情」に該当するか否かの判断を、移民局あるいはアメリカ大使館の審査官が行う際、結果的には同じ不法滞在になってしまった場合であっても、「何の対応もしないまま不法滞在になってしまったケース」と、「できる限りの対応は行ったがやむを得なく不法滞在になってしまったケース」とでは、判断が大きく変わることは言うまでもないからです。なぜならば、しかるべき処置方法があったにもかかわらず、その対応を怠っていれば、「やむを得ない事情」とは判断され辛い可能性が高いからです。従って、あなたの置かれた状況下でどんな対応ができるのかを判断し、その対応策を講じておくことが非常に重要であると言えるでしょう。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

2020年 3月 24日更新

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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