Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2022/ 9/ 7

Vol.87 : アメリカ進出で駐在員を送りたい。どのような申請方法がある?

Q

現在私は、日本で会社を経営しています。コロナパンデミックもそろそろ収束に向かうであろうと考え、近いうちにアメリカへの進出を計画しています。アメリカには弊社の従業員を2~3人ほど駐在員として送りたいと考えていますが、どのような申請方法が考えられますか。アメリカに駐在させたい候補者の中には日本国籍以外の従業員もいます。

A

日本の会社がアメリカに進出する方法として、米国内に子会社を作った後、日本からの駐在員のためのビザを申請するには、E-1、E-2、あるいはLビザの可能性が考えられます。

E-1、E-2ビザについて

まず、E-1、E-2に関してですが、これは、日米通商条約に基づいて規定されているビザで、日本の会社あるいは個人が、アメリカに対して、貿易(E-1)あるいは投資(E-2)を行っていることを前提として申請を行うビザです。また、この貿易・投資を行っていること以外に、アメリカにある会社の50%以上の株式を通商相手国(日米間で貿易あるいは投資が行われている場合は、日本)の会社、あるいは通商相手国の国籍保持者(米国籍やグリーンカードを保持している人は認められません)が所有していることが条件になっています。

E-1に関しては、アメリカに会社を設立した後、日米間で複数(少なくとも2回以上)の貿易を行っていることが必要です。E-2に関しては、アメリカに会社を設立した後、日本からその会社の銀行口座に資本金を送金し、そのお金を米国内で使った後、申請することになります。従って、E-1、E-2 とも、米国に会社を設立後、貿易を行うか、あるいは送金後そのお金を使うまで申請を行うことはできません。また、この申請は、(すでに、何らかのビザを所持してアメリカに滞在している場合を除いて)、日本のアメリカ大使館・領事館で行う必要があります。申請後、約2~4カ月で面接を受けることになります。従って、会社設立の手続を開始した後、ビザが取得できるまで、少なくとも約半年は、予定しておいた方がよいと言えます。

また、E-1、2ビザは、申請者自身が、通商相手国の国籍(パスポート)を有している必要があります。従って、あなたの会社の日本国籍以外の従業員には、残念ながら、E-1、2ビザの適用がありません。そこで、L-1ビザの選択を考えることになります。

L-1ビザについて

L-1ビザの主な条件は、米国にある子会社の(原則的に)50%以上を日本にある親会社、あるいはその株主が、直接的あるいは間接的に、所有していること、また、申請者が申請前の3年間の内、少なくとも1年間以上は、親会社、あるいはその関連会社において管理職、または特殊技能者として勤務していること等が挙げられます。申請は、E とは違って、最初にアメリカの移民局の許可を得る必要があります。この申請には通常3カ月程度を要しますが、移民局に従来の申請料(460ドル+500ドル)に加えて2,500ドルを追加で支払うこと(Premium Processing)によって15日に縮めることができます。移民局の認可を受けた後、日本のアメリカ大使館・領事館でビザの申請を行うことになります。

L-1の申請は、トランプ前大統領の大企業優遇にもとづく政策のため、その審査基準が非常に厳しくされていました。従って、アメリカ現地の従業員を多く雇うことのない会社にとっては、L-1は、申請の選択肢に入っていない傾向がありました。しかしながら、バイデン政権への交代後、審査基準が緩和されました。ただ、現時点では、E-1、2ビザの審査基準よりは、厳しいものと捉えた方がよいと考えられます。この審査基準で最も重要となる要素は、申請者の部下になる従業員の数です。E-1、E-2でもL-1ビザの場合でも、申請者は「管理職者」あるいは「特殊技能者」である必要があります。

一般的に、「特殊技能者」の場合は「管理職者」よりも、その判断基準が厳しいとされています。「管理職者」と定義されるには、申請者の部下にも部下がいることが要求されます。言い換えると、会社の組織図をピラミッド状に描く際に、申請者の下に、ピラミッドの階層が少なくとも2段以上ないといけないイメージです。従って、申請者の下に部下がいればいるほど、認可される確率は上がり、少なければ少ないほど、却下される可能性が高くなることになります。

従って、あなたが2~3人の駐在員の方をアメリカに送ることを考えているのであれば、それに見合うアメリカ現地の従業員を雇う必要があります。アメリカ現地の従業員として数えられるのは、アメリカ市民権保持者に限らす、永住権保持者、E、Lビザの配偶者で就労許可を得ている人、さらに、OPTの場合も含まれます。

あなたの会社のような場合は、日本国籍を持つ従業員はE-1、2ビザの申請を行い、日本国籍を持たない従業員の申請をL-1で考えるのも、申請上の戦略の1つと考えられます。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2022/ 9/ 7

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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