Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2016/11/ 1

Vol.17 : 飲酒運転で捕まってしまっても、ビザは取得できますか?

Q

現在、日系の会社で H-1Bで働いています。今回、日本のアメリカ大使館で H-1B ビザを取得しに行こうと思うのですが、昨年飲酒運転で捕まってしまいました。裁判所から提示された条件は、すべて消化したのですが、このような経歴があっても、H-1Bのビザは取得できるでしょうか?

A

犯罪には、強制送還の対象となる犯罪(Crime Subject to Deportation)と、強制送還の対象とならない犯罪があります。強制送還の対象となる犯罪は、すべての重犯罪(Felony)および一部の軽犯罪(Misdemeanor)がそれに当たります。軽犯罪の中で、強制送還の対象となるものは、Domestic Violence と道徳に反する犯罪(Crime Involving Moral Turpitude)の2つです。Domestic Vciolence とは、夫婦(離婚した後の前の夫・妻を含む)間、あるいは恋人間の暴力行為を言います。 また道徳に反する犯罪(Crime Invoiving Moral Turpitude)には、麻薬に関する犯罪(Controlled Substances)、詐欺(Fraud)、窃盗(Theft)、および暴力に関する犯罪(Crime of Violence)等が含まれます。さらに、2010年1月14日の移民局裁判所の判決により、不当に入手したソーシャル・セキュリーティー番号を用いて就労した場合も、強制送還の対象となると定められました。

飲酒運転自体は、強制送還の対象になる犯罪には含まれませんが、あなたの場合は、まず飲酒運転で逮捕・有罪となったのが何度あるか、また、どのような状況下で捕まったかが問題となります。例えば、飲酒運転であっても4回行うと重犯罪(Felony)となります。飲酒運転は、捕まってから10年以内(以前は、7年間でしたが、2005年1月1日より10年に変更されました)に行うとそれが加算されます。ここで注意しないといけないのは、加算された時から、10年以内に捕まると前回の分も追加されて加算されるということです。例えば、1回目に飲酒運で捕まった後、9年後に捕まると、それは2回目となり、その時から数えて9年後に捕まった場合は(1回目と3回目の間は18年間あるものの)、3回目として計算されるということです。すなわち1度も捕まらない期間が10年間無い限り、回数が加算され続けていくことになります。従って、この計算方法により、合計4回の飲酒運転になると、強制送還の対象となるということです。また3回目であっても、事故を起こしていたり、2度目であっても人身事故を起こしているような場合は、強制送還の対象となる可能性があります。

もし、あなたの飲酒運転が一回だけで、それが強制送還の対象となる犯罪に含まれないからと言って、全く問題にならないというわけではありません。まず、日本のアメリカ大使館のインタビューに行った際に、この記録は必ず出てきます。また申請書類にも、今まで犯罪を犯したり、逮捕されたことがあるか否かの質問が記されています。この際、いかなる軽犯罪の記録が出てきた場合であっても、それを問題とする場合がほとんどであり、その犯罪がどの種のものであったかを証明するのは、申請者側の責任としています。従って、あなたの犯罪記録が飲酒運転であり、その他の犯罪ではないことを証明しなければいけないということです。これには、飲酒運転を処理した裁判所からの書類「Police Report」「Complaint」「Minutes(Probation)Order」「Docket Reports」 等を入手しておかれることを強くお勧めします。特に「Docket Reports」は、あなたが最終判決の条件として与えられた内容(アルコールスクール、罰金の支払い等)を全て遂行した証明となるので大切です。あなたが判決を受けた裁判所に行けば入手できますので、そこでDocket Reports のCertified Copy の発行を依頼して下さい。これらの書類は、アメリカ大使館でのインタビューの際に持参して下さい。

飲酒運転の場合は、ほとんどの場合、大使館指定の医師の所に行き、カウンセリング(診断)を受け、その証明をアメリカ大使館に提出してから、ビザが発行される場合がほとんどです。従って、通常の場合よりも、手続きに時間がかかることが容易に予想されますので、日本での滞在期間を、通常よりも長く予定しておいた方が良いでしょう。通常のビザ発行には、通常で2~3営業日ですが、このような場合には、1週間から3週間程度をみておかれた方が良いと思います。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2016/11/ 1

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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