JMSA Science Forum運営メンバーが送る暮らしのコラム

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2017年12月 1日更新

第1回 : 薬局で売られている風邪薬について

12月に入りますます寒さが厳しさを増し、体調管理が難しい季節となってきました。風邪をひいたりする方も多いのではないでしょうか。風邪といっても、鼻水が止まらない、鼻づまりがひどい、発熱や頭痛がある、咳が止まらない、もしくはこれらすべて当てはまるなど、人によって症状はそれぞれです。また、薬局に行っても、さまざまな会社からたくさんの薬が売られており、どれにどんな薬が入っていて、どれを選べばいいのか難しいことも多々あります。そこで、今回は薬局でどのような風邪薬が売られているのか解説したいと思います。ここで解説することは、日本で薬剤師免許を取得し、科学に従事している私の経験からの見解です。病気は人それぞれ症状が異なります。また、生活背景や遺伝的な要因によって、薬の効き目が全く異なることがあります。症状が改善しない、他の病気の既往歴がある、妊娠しているなど不安なことがある場合は、必ずかかりつけ医に相談することをお勧めします。

お勧めする薬の選び方

日々、製薬会社から多くの薬が発売されています。また、近年では薬局独自のブランドで薬が売られていることもあります。そのため、商品名は異なっても中身が同じであることも珍しくありません。そこで、私がお勧めする薬の選び方は、成分名を見ることです。箱の裏に「Active Ingredient」という欄にかかれていることが多いです。ここをチェックすることで、例えば効果がなくて、違う名前の薬を買ったけれど中身は同じだった、ということを回避することができます。それでは、薬局で売られている風邪薬の成分名を目的別に見ていきましょう。

解熱

よく売られているのが、アセトアミノフェン(Acetaminophen)、ナプロキセン(Naproxen)、イブプロフェン(Ibuprofen)です。アセトアミノフェンは昔から広く使用され、子供にもよく使用さています。座薬(Suppository)としても売られています。座薬は素早く熱をさげたい時に使用されたりします。ナプロキセンやイブプロフェンは、アセトアミノフェンより解熱作用が強力ですが、胃に負担がかかりやすいので、食後の服用が勧められています。また、片頭痛用にアセトアミノフェン、アスピリン、カフェインの合剤も販売されています。症状や年齢によって上手く使い分けるといいでしょう。「Tylenol (タイレノール)」や「Advil (アドビル)」「Aleve (アリーブ)」「Bayer (ベイヤー)」などの商品名で売られています。

咳止め

一般的に「デキストロメトルファ(Dextromethorphan)」という成分が用いられています。脳に働き、咳が出るのを抑える作用があります。一錠10~60mg配合のものが市販されています。60mgという量は、日本で用いられている量に比べると多いので、服用後に気持ち悪くなったり、吐き気を感じる可能性があります。一般的に、薬の量が多くなると副作用発現の可能性も大きくなるので注意が必要です。また、この薬はパーキンソン病や一部の精神疾患治療薬と飲み合わせが悪いことが報告されているので、これらの疾患がある方は、特に主治医に相談する必要があります。「Delsym (デルシム) Cough」「Mucinex (ミューシネックス) DM」「Robitussin (ロビタシン) DM」などの商品名で売られています。※Musinex DM, Robitussin DMは去痰薬も含まれています。

グアイフェネシン(Guaifenesin)というものが薬局で購入できます。痰の成分を調節し、痰を除去するのを手伝ってくれます。

鼻づまり

フェニレフリン(Phenylephrine)というものが用いられますが、総合感冒薬の中に入っていることが多いです。総合感冒薬の中には他の薬も入っているので、鼻づまりだけ解消したい場合には、プソイドエフェドリン(Pseudoephedrine)というものが単剤で販売されています。この薬は、さまざまな理由から、購入時に身分証明書の提出が必要です。これらの薬は血管を収縮させ鼻づまりを解消させますが、コーヒーなどと一緒に服用すると動悸がする可能性が指摘されています。

総合感冒薬

総合感冒薬には、一般的にアセトアミノフェン、デキストロメトルファン、フェニレフリンが配合されています。発熱、咳、鼻づまりの症状があれば総合感冒薬を服用する方が、手間が省けて効率的かもしれません。しかし、必要のない薬を服用することは体に負担がかかるので、症状に合わせて総合感冒薬を服用するのか、それぞれの症状に合わせた薬を服用するのかを考えた方がいいでしょう。「Contac (コンタック)」や「Dayquil:Cold & Flu, Multi-Symptom Relief」などの商品名で売られています。

注意点

アジア人と欧米人では薬に対する作用の違いが報告されたりしているので、注意が必要です。日本で売られている薬よりアメリカの薬の方が、成分が多いこともあります。しかし、自己判断で薬を半分に割るなどの行為は注意が必要です。薬によっては製剤的な工夫がされていて、効き目などがコントロールされているものもあります。自己判断などで割ってしまうと、予想外の作用が出る可能性もあります。薬局では、薬の配合量が少ないものから多いものまでさまざまなものが売られているので、箱の裏の成分名と同時に量にも着目したいところです。医薬品医療機器総合機構のホームページでは、日本の医薬品の効果や服用量の目安が公開されているので、参考にしてみるのもいいかもしれません。また、アルコールなどは薬の薬効に大きく影響するので、薬を服用中は飲酒を控えることを強くお勧めします。

今回のコラムニスト
Postdoctoral Research Scientist 樋口 聖(ひぐち せい)

城西大学薬学部を卒業し、日本の薬剤師免許を取得。福岡大学で博士(薬学)を取得。京都大学医学で4年間研究員として勤務し、2015年よりColumbia University Medical Centerで研究員として勤務。薬剤学、薬理学、神経学、行動学が専門で現在は脂質代謝や肥満の研究に従事。

2017年12月 1日更新

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