コラム

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

2020年 2月 10日更新

第55回 : H-1B期限切れが近くても、グリーンカードに申請できる?

Q

現在、私はITの会社でH-1Bビザを取得し働いています。当初は、H-1Bの最大延長期間である6年間が終われば日本に帰る予定だったのですが、会社から残って欲しいと言われ、私もそれに応えて残ることを考えています。ただ、H-1Bも更新した後、残りの期間が1年と2カ月しかありません。会社からは、グリーンカードの申請をするように勧められているのですが、周りの人の話では、残りの期間があまりにも短いので、もう間に合わないのではと言われています。私には、残る道はないのでしょうか。

A

まず、グリーンカードの申請に必要とする期間は、現在のところ、約1.5~2.5年間を要しています。従って、あなたの場合、H-1Bの残りの期間が1年2カ月しかないため、間に合わないように見えますが、H-1Bの6年以降の延長を行い、これと平行してグリーンカードの申請を行える可能性は、充分にあります。

雇用を通してグリーンカードを取得するプロセスは、細かく分けて、①規定の給料の設定、②人材募集広告、③Labor Certtification の申請、④I-140 の審査、⑤I-485(あるいは Consular Processingを通して)の審査の5つに分けられます。

現在、最初の規定給与の設定に約4カ月間、人材募集広告に2カ月間(人材募集広告を約1カ月間行った後、さらに、その募集に対する応募者の反応を見るためさらに1カ月間待ちます)、Labor Certification の申請に約5~7カ月、この段階で、半数以上の申請書が Audit (このAuditでは、実際に募集広告を行ったかどうかの確認、およびアメリカ現地の労働者からの雇用が無理であったことの説明を求められる場合が多いです。)にかかりますが、その場合さらに約4カ月、I-140の審査に約8カ月間~12カ月間(通常の申請料に1,440ドルを追加で支払い Premium Processing を使えば15日間)、最後のI-485の審査に、約8~16カ月間を要しています。

最初の手続きの規定の給料の設定とは、その役職、および就労を行う地域において妥当だとEDD(労働局)が判断する給与を決めるプロセスのことを言います。I-140の申請の段階で、スポンサーとなる会社が、規定給料を支払えるだけの経済的能力があるか否かが審査されることになります。

ここで、あなたのケースに適用される法律ですが、グリーンカードの申請を開始して1年間以上経過した場合は、H-1Bの延長が6年以降も1年毎にできるとされています。また、I-140が認可された場合は、6年以降であっても、3年間延長が可能になります。ただ、あなたの場合、問題があり、グリーンカードの申請を開始したことになるのは、Labor Certification の申請を開始した時点からになります。従って、H-1Bの有効期限が,規定給料の設定に要する約4カ月間と、人材募集広告に要する2カ月間なので、H-1Bの有効期限の残り1年2カ月間では、恐らく、約4カ月間が足りないことになります。

この問題点に関して、あなたの場合、以下の2つの解決策が考えられます。まず、H-1Bを取得した後、過去約5年の間にアメリカ国外に出ていた期間があれば、この間は、H-1Bの6年に加算されません。従って、もしあなたが、この約5年間の間に、4カ月間以上国外に出ていたことがあれば、この日数分、H-1Bの延長を6年以降もできることになります。従って、今すぐに、グリーンカードの申請を行い、その後、今のH-1Bが切れる半年前以降に、この国外に出ていた期間分の延長を行います。そうすれば、この延長した期限が切れる頃には、あなたは、グリーンカードを申請して1年以上が経過していることになりますので、さらに、そこから、1年間のH-1Bの延長が可能になります。

次に、もしあなたが、過去5年間に、アメリカ国外に出ていた日数が4カ月間に満たない場合ですが、この場合は、これからの1年2カ月の間に、足りない期間の分を国外に出ていることにより、4カ月間のH-1Bの延長を行うことができるようになります。例えば、過去5年間にアメリカ国外に出ていた期間が3カ月しかないような場合、足りない1カ月の期間をこれからの1年の間に、アメリカ国外に出れば、上記の例と同じように、H-1Bの延長を6年以降も4カ月間できるようになります。

その後、最後の段階の I-485 の申請を行った時点で、H-1Bの延長の必要はなくなります。I-485申請後、約3~6カ月間で、就労許可、および一時渡航許可が下りることになります。あなたの場合、いずれにしても、時間がないので、できる限り早期にグリーンカードの申請を開始されることをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

2020年 2月 10日更新

今回の記事はいかがでしたか?
トピックとして書いてほしいご質問やリクエストを受け付けております。以下に直接ご連絡を頂ければ幸いです。

taki@takilawoffice.com

Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

Newport Beach Office .. 1300 Quail Street, Suite 107, Newport Beach, CA 92660
Torrance Office .. 21221 S. Western Ave. Suite 215, Torrance, CA 90501
Los Angeles Office .. 3435 Wilshire Blvd. Suite 650, Los Angles, CA 90010

バックナンバー

BACK ISSUES
アメリカ移民法・ビザ申請の基礎
最新コラム
バックナンバー