心のケアと癒しに役立つ臨床心理のここだけのお話

心理カウンセリングやセラピーをしている中で、心の悩み、成長、癒しに関するいろんなトピックが出てきます。このコラムの中でその事をより多くの方にシェアして、皆様のお役に立てれればと思っております。

2022年 4月 25日更新

第8回 : メンタルヘルスにおいて重要な「自分との約束」

約束とは、物事に関しての取り決めですが、大きく分けて二つあります。一つは「他人との約束」、そして二つ目は「自分との約束」です。前者は、クライアントと午後にミーティングをする、友達と夏に海に遊びに行く、家族と旅行に行くなど、自分以外の人と取り決めをします。一方、後者は、毎朝5時に起きる、ダイエットをする、週末に掃除をするといった自分との取り決めで、あなた以外は誰も知りません。人間社会においては他人との約束は大切ですが、メンタルヘルスにおいては「自分との約束」の方が重要です。今回のコラムではこの「自分との約束」についてご説明します。

自分との約束は自己承認につながっている

なぜ「自分との約束」は重要なのでしょうか。理由は、約束が自己承認とつながっているからです。自己承認とは自分を認めることですが、承認が高いほど大きな自信が生まれます。この自己承認のコップは、赤ちゃんの時は並々と満たされているのですが、親の育て方や環境などで減ってしまうことがあります。

自分が何かしようと思い立ち、その「自分との約束」を守った時に得られるのは自信や達成感そして自分への信頼感です。これらがまさしく自己承認なのです。反対に「自分との約束」を破ると不安になり、自己承認のコップからどんどん自信が漏れてしまいます。人間には承認欲求がありますが、自分で自分を認めることができないと他人から承認を得ようとします。そういう人に限って「自分との約束」を破っていることが多く、しかもそれができていないことを認められません。一方、どんな小さなことでも「自分との約束」を守った人は、自分をほめて認めることができるので、他人からの承認は必要ありません。しかも、自己承認の高い人は他人から見ても信頼できて頼れる存在なので、結果的に他人から多くの承認をもらうことができるのです。

前述のように「自分との約束」は、自分だけが知る約束で、それを守っているか破っているかを知っているのも自分だけです。自分が約束を破ることで被害を受けるのは友人や家族でもありません。ほかならぬ自分なのです。自己承認できず他人をあてにする人生を生きたいのかどうか、自分に問いかけてみましょう。

些細なことから始める「自分との約束」

「自分との約束」は些細なことで構いません。約束を守る、または守り続けることがとても大事です。自分が日頃やっていること、あるいは簡単にやり続けられるような好きなことを選ぶとよいでしょう。自分の許容範囲からほんの少しハードルが上がる程度の約束もよいですね。コロナ禍では、毎日散歩する、外で運動する、家の整理をする、断捨離をするといった「自分との約束」が多いです。約束を守っていると、気分がすっきりし、やってよかったと思って、自分を認められるようになり、そこから自信につながっていきます。

「自分との約束」は、自分を発奮させるとは違う概念で、コミットメントに近く行動が伴います。面倒だけど怖いけれど、実際に動くことで約束が明確になり、どんな結果になっても、それは自分を認めるステップになります。メンタルヘルスにおける大きな問題に依存症がありますが、アルコール依存症になった人が「自分との約束」で禁酒を続けられるというのはとても大きなチャレンジです。やり続けた人は体調がよくなるだけでなく、自分に自信がつき、周囲の評価も変わってきます。

もし「自分との約束」を守れなかったとしても大丈夫です。それを認めて自分に謝罪しましょう。自分に対して申し訳ないという思いが大切なのです。また、つらい、ごまかしたい、うやむやにしたい、そんなネガティブな感情も認めていくことが大事です。そしてこれからどうするかを考えてみましょう。もっと小さな約束からやり直してみることもできます。約束を破った時に自分がどんな言い訳をするのか、どんな反応をするのか、どんな感情を抱くのか、それを考えるだけでも自分の思考のパターンがよく見えます。「自分との約束」は自分とつながっていくきっかけになるかもしれません。無理をせず続けられることを自分と約束してみましょう。

上記の内容が、落ち込みや不安解決の糸口になれば幸いですが、つらいときは一人で苦しまずに、心理カウンセリングやセラピーを受けてみるとよいと思います。

2022年 4月 25日更新

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CA州心理士免許(LMFT)と博士号を持つ経験豊かな2人のセラピストによる心理カウンセリングオフィス。多くの方々のより良い心の健康を目指し、個人、カップル、家族の心理セラピー/カウンセリングを日本語および英語で提供している。仁科盛次郎(心理療法士、LMFT#50945)および菱谷有希子(心理療法士、LMFT#53262)はCA州公認のマリッジファミリーセラピストで、専門は家族・カップル間のコミュニケーション、異文化や多文化における問題、思春期における心理やアイデンティティ問題、薬物依存治療など。多種多様な家族療法を取り入れたアプローチや、物の見方を変え解決方法の発見へと導くアプローチ、催眠療法などの潜在意識セラピーを提供。また、両者ともに移民難民、性犯罪にかかわる青少年更生、薬物リハビリテーション施設での経験を持つ。大学院講師としての活動及び後輩育成にも精力的に取り組んでいる。

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