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人は、人生において常に「選択」しています。それは行動や言葉だけでなく気持ちにまで及びます。例えば、あなたが映画007のようなスパイだったとしましょう。諜報活動を続けていたあなたは、ある日敵に捕まり武器を取り上げられ窓もドアもない空間に閉じ込められてしまいました。しばらくするとゴォーという音と共に前後の壁が迫ってきました。このままでは押し潰されてしまいますが、ふと後ろの壁を見ると穴があり水槽があるのを発見しました。しかし、その水槽には自分の首まで来るほどヘドロが入っています。ここで選択肢が生まれます。まずは迫りくる壁を避け水槽に入るかどうか、つまり生きることを選択するかどうかです。生きることを選択したあなたが水槽に入った時、壁は完全にくっつきあなたは閉じ込められてしまいました。

ここまでは行動の選択でしたが、ここからは心理の選択です。今自分が置かれている状況をどう見るかは人によって異なります。「暗くて臭い水槽に閉じ込められていやだな」と思うか、「助かった！ここから脱出する方法は何かないだろうか」と思うか。同じ状況でも人によってその捉え方は大きく変わるのですが、これはとても重要なことなのです。人は何か起こったとき、その瞬間に自分にとってベストだと思うものを選んでいます。しかし、自分がベストだと思って選んだにもかかわらず、こんなはずではなかったと捉えてしまうと、とたんにネガティブな感情が生まれてしまいます。「ヘドロじゃなくて水だったらよかったのに。最悪だ」といったように、今置かれている状況にはないもっと良いことを想像してネガティブになってしまいます。つまり自分でネガティブな感情を選択しているわけです。

第2回のコラム「自分の心を知る。気持ち・感情・思考の観察のチェックポイント」でもご説明しましたが、人の「気持ち」「思考」「行動」は三角関係でつながっています。自分が置かれている状況は、気持ちや思考、行動で大きく変わってくるのです。ここで大切なことは、自分が常に心の中でどういう選択をしているかに気付くことです。「楽しい」「うれしい」「ラッキーだ」というポジティブな方か、それとも「つらい」「悲しい」「最悪だ」というネガティブな方か。大変な状況に陥ったときにこそ、自分がどんな選択をしているかを観察してみましょう。かといって、極端なポジティブ思考はメンタルヘルスにおいて健康な状態だとは言えません。ポジティブもネガティブも両方あって当たり前なのです。良いことも悪いこともある、それを認めてバランスを取っていくことが大事です。そのためにも普段から自分がどんなメンタルの選択をしているかを知っておくとよいと思います。メンタルの選択は、常にあなたに決定権があることを忘れないでおきましょう。

人は自分が置かれている状況を把握できずパニック状態になると、心がショックを受け思考回路も止まっています。まずは自分がその状態にあるということに気付きましょう。気分転換や運動をしてみると徐々に心が落ちついてくるはずです。顔を洗うのも、体の温度が瞬時に変わり、文字通り冷静になることができます。人の呼吸はパニックになると早くなりますが、お茶を飲んで一息つくと変化が起こります。高まった気分や気持ちに対し、体をどう刺激すれば有効なのか、ある程度自分でモニターするとよいかもしれません。簡単なことでも、思っているより効果があるので、できることからぜひ試してみましょう。