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心のケアと癒しに役立つ臨床心理のここだけのお話
心理カウンセリングやセラピーをしている中で、心の悩み、成長、癒しに関するいろんなトピックが出てきます。このコラムの中でその事をより多くの方にシェアして、皆様のお役に立てれればと思っております。
37 vez : 自分の「当たり前」を見直す。異文化間コミュニケーションで起こる誤解とは
前回は、国際結婚における問題としてコミュニケーションの難しさについてご説明しましたが(第36回)、そもそも、言語や文化の違いは、私たちの日常生活や人間関係に深く影響を与えます。特に、異文化間でのコミュニケーションでは、言葉の背後にある文化的な違いが原因で誤解や行き違いが生まれることがよくあります。
日本人とアメリカ人の間で起こる典型的なコミュニケーションの違いとして、高文脈(ハイコンテクスト)と低文脈(ローコンテクスト)が挙げられます。高文脈文化では、言葉そのものだけでなく、状況や関係性、背景知識などを通じて相手の意図を読み取ることが重視されます。日本語はその典型で、あいまいな表現や暗黙の了解に頼ることが多く、相手に「空気を読む」ことが期待されます。しかも、主語(S)+目的語(O)+動詞(V)という語順なので、最後まで話を聞かないと意思や意図が分からないことが多いです。一方、低文脈文化では、言葉そのものが明確に意図を伝える手段となり、はっきりと伝えることが重要です。英語は語順からいっても、主語(S)の次に動詞(V)が来るので、「誰が」「何をしたいのか」がはっきり分かる上、特に、アメリカでは幼い頃から自分が相手に何を望んでいるかを明確に伝えることが求められる教育を受けています。
日常の何気ない会話でも、この文化の違いは顕著に現れます。例えば、アメリカ人の夫と日本人の妻が夕食について話した場合を想定してみましょう。
夫: 「僕はラーメンが食べたい」
妻: 「ラーメン、寿司、焼き鳥、何がいいと思う?」
夫が「今日はラーメンが食べたい」とはっきり言っています。つまり、彼にとってはそれが彼の意思を伝える自然な方法です。一方で、妻は「ラーメン、寿司、それとも焼き鳥?」というように、選択肢を挙げ、一緒に考えて最終的な決定を夫婦で共有したいと思っています。このような会話のすれ違いは、夫にとっては「なぜはっきり決めないのか」といういら立ちを、妻にとっては「一緒に決めるというプロセスを理解してくれない」という不満を生みます。お互いの考え方が異なるために、単なる食事の話題がストレスを引き起こすことさえあるのです。
こうした誤解が生じる大きな原因は、文化的な背景による「当たり前」の違いにあります。日本人の妻は、相手が自分の意図を自然にくみ取ることを期待しています。しかし、アメリカ人の夫は、自分が質問をされたら直接的に答えるのが当たり前だと思っているのです。このような違いを乗り越えるためには、いくつかの方法があります。最も重要なことは、相手の文化を理解するように努めること。夫婦間で「お互いが異なる文化的背景を持っている」という前提を持つことで、コミュニケーションの仕方が変わります。次に、確認のプロセスを取り入れることが有効です。例えば、「私はあなたの言ったことをこういう意味に取ったけど、それで合ってる?」といった確認を積極的に行うことで、誤解を未然に防ぐことができます。
上記のアメリカ人の夫と日本人の妻の改善された会話を見てみましょう。
夫: 「今日はラーメンが食べたいけど、君はどう?」
妻: 「ラーメンもいいけど、寿司はどうかな?」
夫: 「寿司もいいかもね。一緒に決めようか」
お互いが自分の意見を述べ、さらに相手に尋ねることで、意思を確認し合いながら選択肢を広げることができます。こうした小さな確認が積み重なることで、文化の違いを乗り越えたスムーズなコミュニケーションが可能になります。
文化の違いが原因で起こる誤解は、感情にも大きく影響します。お互いが自分の感情を理解し、共有することができなければ、ストレスやフラストレーションがたまり、さらに関係が悪化してしまうこともあります。特に、感情を表現することが苦手な日本人にとって、感情にフォーカスしたコミュニケーションを心がけることが重要です。何か問題が起こった際には「何を感じたのか」「どう考えているのか」を相手に伝えることが、関係の修復や改善に役立ちます。感情を言葉にすることで、相手に自分の気持ちを理解してもらい、相手の反応もより穏やかになります。特に子どもとのコミュニケーションにおいては、感情にフォーカスすることが子どもの健全な成長にもつながります。
そして、異文化間でのコミュニケーションを円滑にするためには、何よりも自分自身の文化や価値観を理解することも大切です。自分が「当たり前」と思っていることが、実は相手にとってはそうではないかもしれないと気づくことで、相手への理解が深まります。相手の文化を尊重しつつ、自分の意見を適切に表現できるようになると、異文化間のコミュニケーションはより豊かで実りあるものになります。このように、文化の違いを理解し、お互いに歩み寄る姿勢を持つことが、異文化間のコミュニケーションを成功させる鍵となります。
Actualizada en 2024/ 9/ 27
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Columnist's Profile
- インターナショナル ライフサイクル ファミリーセラピー(International Lifecycle Family Therapy Inc.)
CA州心理士免許(LMFT)と博士号を持つ経験豊かな2人のセラピストによる心理カウンセリングオフィス。多くの方々のより良い心の健康を目指し、個人、カップル、家族の心理セラピー/カウンセリングを日本語および英語で提供している。仁科盛次郎(心理療法士、LMFT#50945)および菱谷有希子(心理療法士、LMFT#53262)はCA州公認のマリッジファミリーセラピストで、専門は家族・カップル間のコミュニケーション、異文化や多文化における問題、思春期における心理やアイデンティティ問題、薬物依存治療など。多種多様な家族療法を取り入れたアプローチや、物の見方を変え解決方法の発見へと導くアプローチ、催眠療法などの潜在意識セラピーを提供。また、両者ともに移民難民、性犯罪にかかわる青少年更生、薬物リハビリテーション施設での経験を持つ。大学院講師としての活動及び後輩育成にも精力的に取り組んでいる。Youtube「カリフォルニアから心の癒しチャンネル」にて心にまつわるビデオ公開中。
International Lifecycle Family Therapy Inc.
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