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まるわかりハーグ条約
ハーグ条約は国境を越えた子どもの移動に関する条約です。多くの皆さんに正しく知ってもらえるようにコラムを執筆します。ぜひお読みください。(本コラムはロサンゼルスの事例を中心に紹介しています。)
ハーグ条約ケースの手続の流れ
一方の親の同意がないまま、もう一方の親が子どもを連れて外国から日本に移動した場合、ハーグ条約上の手続はどのような流れになるのでしょうか?架空のケースを元に説明していきます。
日本人女性の花子さんは、米国留学中に米国人男性のジョンさんと出会い、米国で結婚しました。その後、花子さんとジョンさんの間に子どもが生まれ、3人でカリフォルニアで生活していました。 ところが、花子さんとジョンさんの間にケンカが増え、花子さんは日本への帰国を考えるようになりました。ある日、ジョンさんの出張中に花子さんは黙って5歳の子どもを連れて日本に帰国してしまいました。 その後、ジョンさんは、花子さんからの「子どもは日本で育てます。」とのメールで子どもが日本に行ったことを初めて知りました。ジョンさんは子どもが日本で暮らすことには同意していません。
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ハーグ条約が適用されるためには、①子どもの年齢が16歳未満、②移動する前にいた国と移動した先の国が条約の締約国、③残された親の監護の権利が侵害される形で子どもが国外に移動されたなどの条件があります。
このケースの場合、①子どもは5歳、②日本と米国はハーグ条約の締約国、③ジョンさんには子どもの監護権があり日本に行くことに同意していませんので、ハーグ条約の対象になります。
なお、ハーグ条約では、両親や子どもの国籍に条件はありません。花子さん、ジョンさん、子どもがハーグ条約の締約国ではない国の国籍を持っていたとしても、締約国(米国)から締約国(日本)への連れ去りであれば、ハーグ条約が適用されます。
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このような形で子どもを移動させることは、子どもにとって心理的な影響を与えます。子どもはこれまで慣れ親しんだ場所を急に離れることになり、また、ジョンさん、親戚、友人などに別れを告げることもできません。日本でハーグ条約の裁判手続が開始されれば、原則、返還が命じられ、子どもは元いた国である米国にまた移動することになるのです。
また、ジョンさんに黙って子どもと国外に移動した場合、花子さんの行為は米国では刑罰の対象にもなり得る点にも注意が必要です。これらを踏まえ、帰国を決断する前に、子どもの移動についてジョンさんの同意を得ておく、同意を得られない場合は裁判手続を利用して子どもの移動や監護について法的に整理しておくことが望ましいです。
花子さんはやむを得ない理由により日本への帰国を決断したのかもしれませんが、今一度、正しい情報をもとに、子ども、花子さん自身、そして家族にとって何が最善かを考えていただきたいと思います。事前に弁護士に法的なことを相談したり、この条約の中央当局を務める外務省のハーグ条約室に条約や日本での手続について問い合わせるなどして、慎重に判断いただければと思います。
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ジョンさんがハーグ条約に基づき子どもの返還を希望する場合、条件が当てはまれば中央当局の支援を受けることができます。ハーグ条約の手続は、残された親であるジョンさんが申請を行うことにより始まります。
まずジョンさんは申請書を米国中央当局(国務省:U.S. Department of State)に提出します。米国での審査後、日本中央当局(外務省:以下、中央当局とします。)にジョンさんの申請書が送られます(直接、ジョンさんが中央当局に申請することも可能です)。
中央当局は、ジョンさんの申請書を受け取った後、援助を行うか否かを決めるための審査をします。援助決定=子の返還が決まった、という意味ではなく、問題解決のために中央当局が花子さんとジョンさんに支援することが決まったことを意味します。援助決定に関する審査は大きく分けて以下の2つがあり、2週間程度の時間を要します。
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- 1 申請書類の確認
- ジョンさんは、申請書類にジョンさん(申請者)、花子さん(子どもを連れ去った親)、子どもの情報の他、法律に基づく申請の根拠、連れ去りが行われたときの状況などを記入します。また、ジョンさんの本人確認や子どもについての監護の権利を持っていることを示す書類のコピーなどを提出します。
- 2 子どもの所在調査
- 法律に基づき、中央当局が、子どもが日本にいるか、また日本のどこに住んでいるのかなどの情報の提供を関係機関に求めます。この調査の目的は中央当局が子どもと一緒にいる親である花子さんに連絡するためであり、ジョンさんに花子さんと子どもの住所を伝えるためではありません。
援助決定の判断は申請者から出された書類に基づき行います。花子さんとジョンさんの認識や主張が異なることが想定されますが、その点については、話し合いや裁判の中でそれぞれが主張していくことになります。援助が決まれば、中央当局は、花子さんとジョンさんのそれぞれに連絡を取り、どのような形で問題解決することを希望するか尋ねます。
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中央当局が花子さんとジョンさんに示す問題解決方法には以下の3つがあります。
- 1 当事者(又は代理人)による話し合い
- 2 裁判外紛争解決手続(ADR)機関における協議のあっせん
これらを行うためには、花子さんとジョンさん両者の同意が必要です。両親が自発的に話し合い、お互いが納得して友好的な解決を図ることは、子どもの福祉の観点から望ましいと言えます。
二人だけの話し合い(①)が難しい場合は、第三者を間に挟んだ話し合い(②)があります。協議のあっせんとは、主張が相対する当事者に話し合いの機会を与え、公正中立な第三者が双方の主張の要点を確かめ、お互いの誤解を解くなどして、当事者間に和解を成立させて紛争を解決に導こうとするものです。
- 3 裁判手続(子どもの返還に関する裁判)
裁判を行うには両者の同意は必要なく、ジョンさんが裁判所に申立てることで手続が始まります。子どもの返還に関する裁判は、子どもを元いた国である米国に返還するか否かを判断する手続であり、子どもの監護権や親権を誰が持つかということを判断する手続ではありません。
ジョンさんと花子さんは理由や証拠を示しながら、子どもを元いた国に返還すべき/返還すべきでないと主張していくことになります。特別な理由が認められるケース以外は、原則、子どもの米国への返還が命じられることになります。早期に解決するために、迅速に裁判手続が進みます。
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裁判では、原則として米国への返還が命じられることになりますが、具体的な事情により、不返還と決定されることもあります。実際に、両親間の話し合いにより、元いた国に戻すことが決まった場合もあれば、子どもが日本に居続けることが決まった場合もあります。裁判で返還命令が出たにもかかわらず、花子さんが決定に従わない場合、ジョンさんは間接強制(金銭の支払いが課されるもの)と代替執行の申立てを行うことができます。代替執行では、裁判所の執行官らが花子さんと子どものいる家に出向き、子どもの返還を強制的に執行します。
なお、裁判で返還を求められているのは子どものみになります。花子さんが子どもと一緒に米国に戻るか、子どものみを米国に戻すかは、花子さんとジョンさんとで決めることになります。
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ハーグ条約の手続は、ジョンさんが申請をするところから始まり、話し合いや裁判を経て、子どもを米国に戻した時点または戻さないことが決まった時点で終了になります。援助決定から援助終了までの間、中央当局は中立的な立場で両方の当事者に様々な支援を提供するほか、国内の関係機関や外国の中央当局とのやりとりをしながら問題解決のためのお手伝いをします。
- ポイント
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- 残された親(申請者)の援助申請または裁判申立てによりハーグ条約の手続が開始する。
- 援助決定がなされたものについては、中央当局が子どもとその同居者の住所を調べるが、中央当局はその住所を申請者には伝えない。
- 問題解決の方法は、①当事者(又は代理人)による話し合い、②裁判外紛争解決手続(ADR)機関における協議のあっせん、③裁判手続(子どもの返還に関する裁判)がある。
Actualizada en 2020/ 6/ 1
- ホームページ: 外務省 ハーグ条約
- 動画: Youtube
- Twitter: @1980HaguePR
Information
- 広報班外務省ハーグ条約室(外務省ハーグ条約室)
日本では2014年4月1日にハーグ条約が発効しました。ハーグ条約では各締約国に中央当局の設置を義務づけており、日本では中央当局を外務大臣とし、その実務を外務省ハーグ条約室が担っています。
ハーグ条約室では、少しでも多くの方に正しくハーグ条約について理解してもらうべく、国内外で広報活動を行っています。
ハーグ条約について様々な角度から解説していきます。ご不明な点がありましたら、以下までお問い合わせください。
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