米国公認会計士による、わかりやすい!会計・税金101

アメリカの生活ではつきものの、お金の話、会計や税金にまつわる基本情報や知っていると役に立つトピックスを選んでお届けします。

2022年 2月 2日更新

第1回 : 出国税って何? ~日本へ完全帰国する場合は税金がかかるかもしれません!

今回のテーマは出国税です。「出国税って何?」っていう人も多いのではないでしょうか。実はこれ、アメリカ居住者は必ず知っておくべき税金です。

新型コロナウイルスをきっかけに、この2年間で日本に完全帰国された方が増えた印象です。ずっと日本に帰ろうか悩んでいて、パンデミックをきっかけに決断したという人も多いのではないでしょうか。もし、これから日本への完全帰国を考えている人は、ちょっと注意が必要です。

完全帰国にはいろんなケースが考えられますよね。

  • 長年アメリカに住んでいたけれど、老後は日本で過ごそうかな?
  • 国際結婚をしたけど離婚したので、もう日本に帰ろうかな?
  • 高齢の両親の介護が必要だから、そろそろ日本に帰ろうかな?

身の回りの物を整理して、移民局に届け出を出して、日本に帰ろう。

でも、ちょっと待ってください!

アメリカ政府に永住権や市民権をただ返還すればいいというわけではないんです。もしかしたら、日本に帰る前に税金がかかるかもしれません。自分が課税対象かどうか確認が必要です。その税金とは、Expatriation Tax(出国税)と呼ばれるものです。

出国税の課税対象者

どのようにして出国税は発生するのでしょうか。以下の2パターンのいずれかに該当する場合、出国税を納める必要があります。

  1. 過去5年の平均課税額が一定の金額以上(2020年は17万1000ドル以上)の場合。
  2. 全世界の財産の価値が2ミリオンドル以上ある場合。

また、過去5年の所得税申告書は必ず提出しておく必要があり、納税を全て支払っておく必要があります。これにはタックスリターンだけでなく、アメリカ国外の資産の申告も含まれますので注意が必要です。

出国税回避のための対策
夫婦別で確定申告を行う。
過去5年の平均課税額については、夫婦合算(ジョイント)で確定申告をしている場合、永住権を放棄するのが妻だけだったとしても、夫婦合算で確定申告した金額が対象となります。そのため、離婚が具体的になり永住権を放棄することが視野に入った時点で、確定申告を夫婦で分けて行うことは一つの対策になります。
401(k)に最大限の財産を入れておく
401(k)は、その資産を引き出した時に課税されるので、Expatriation Taxの対象外になります。

また、出国税とは直接関係はありませんが、アメリカの永住権や市民権を返還、放棄する場合、その他にとても大事なことがあります。永住権や市民権を返還、放棄する場合、「Form 8854」という書類を提出する必要がありますが、この書類を提出しなかった場合の罰金がとても高額です!なんと罰金は1万ドルです。

これから日本に完全帰国する方は、ぜひ上記のことに留意して帰国の準備を進めてください。ご心配な方は、一度、会計士に相談してみることをお勧めします。

2022年 2月 2日更新

Columnist's Profile

会計士・CPA尾崎真由美(Todd's Accounting Services / 尾崎会計事務所)

ワシントン州会計士、法学修士、経営学修士、尾崎会計事務所代表、シアトル国際会計代表も兼務。長年にわたる経験と知識で個人のお客さまから法人のお客様まで、個々のニーズに合わせたサービスを提供してきた。個人向けタックスリターン、相続税、その他タックスプランニングはもちろん、法人向けサービスとして会社設立サポートやアウトソース、ブックキーピング、会計税務コンサルティング等、幅広いサービスを展開。親切、お客さまに満足していただけるサービスを提供する。

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