Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2023/ 7/ 6

Vol.97 : 一社でサポートできるグリーンカードの申請数は?

Q

私は、マーケティング会社の経営者です。先日、従業員の1人からグリーンカードの申請をして欲しいと依頼がありました。頑張って結果も出してくれていて、会社にとっても重要な存在なのでサポートをしてあげたいのですが、すでに他の従業員のグリーンカードの申請を行っているところです。もう1人のグリーンカードを申請することにより、会社やすでに申請している従業員の手続きに影響が出ないかが心配です。一般的に、一つの会社で何人までグリーンカードの申請が可能かということは決まっているのでしょうか?

A

一般的に、ある会社が何人までグリーンカードの申請ができるかは、当該会社の財務状態によります。会社を通してグリーンカードを取得するプロセスは、細かく分けて以下の5つに分けられます。

  1. 規定の給料の設定
  2. 人材募集広告
  3. Labor Certtificationの取得
  4. I-140の審査
  5. I-485(あるいはConsular Processingを通して)の審査

「規定の給料の設定」とは、その役職および就労を行う地域において、妥当だとEDD(労働局)が判断する給与を決めるプロセスのことを指します。現実的には、平均給与よりもやや(場合によってはかなり)高めの給与額が提示される場合が多いです。ただし、レストランのシェフ等、そもそも、アメリカ人労働者が入りにくい分野の職業は、比較的低めに出る傾向があります。現在では、恐らく労働局の人材不足が影響していると考えられますが、10カ月間を要するケースも珍しくありません。この給料の設定が終わった後、人材募集広告を約1カ月間行い、さらにその募集に対する応募者の反応を見るためさらに1カ月間待つことになります。

次に「Labor Certification」のプロセスですが、質問状(Audit)の来なかったケースで約7~9カ月を要しています。また、Auditを受けたケースでは、このAuditのプロセスで、さらに約3~4カ月を要しています。この「Labor Certification」は、労働許可と勘違いされることもありますが、そうではなく、労働局が当該ケースが移民局に進んでもよいという許可のことで、この申請カテゴリー(Eb-2、3)では、この労働局からの許可がないと次のステップに進むことができません。

次は、「I-140の審査」になりますが、この審査であなたの会社で何人までグリーンカードのスポンサーを行うことができるかが問題になります。「I-140の審査」では、スポンサーである会社が、労働局が定める規定の給料を払うだけの経済的能力があるかどうかということがその審査の主な対象となりますが、それは、以下の3つのステップで判断されます。

第1に、申請者が現在その会社で(H-1B、E-2等の就労可能なステータスを持っていて)働いている場合は、すでにその給料が支払われているかどうかということです。もし、規定の給料がすでに支払われているような場合は、仮にその会社が赤字であったとしても、認可される可能性は大きいです。第2に、もし申請者の給料が規定の給料に満たない、あるいは現在その申請者がスポンサーとなる会社で働いていないような場合には、会社の純利益(厳密には、昨年度までの繰り越し赤字を除いた納税申告対象利益)が、規定の給与額に満たない差額分以上、あるいは(申請者が現在働いていなければ)規定の給与額以上あるかどうかが判断の対象となります。もし、規定の給料に達していれば認可される可能性は大きいです。逆に、規定の給与額に達していない場合(例えば、会社が赤字のような場合)は、この判断基準をパスすることができません。しかしながら、第3に、現在の給料も会社の純利益も規定の給料額に達していなかったとしても、会社の純流動資産が上記の差額、あるいは規定の給与を支払えるだけあれば、パスすることも可能です。これは、会社の資産表(貸借対照表)から判断されます。厳密には、流動資産の合計から流動負債の合計を引いた額がこれに当たり、分かりにくい場合は、会社の担当の税理士・会計士に尋ねるのが良いと思います。

つまり、あなたの会社が何人までグリーンカードのスポンサーをすることができるかどうかは、申請している複数の従業員の設定された給与の額の合計が上記の審査をパスできるかどうかによります。例えば、あなたの会社が2人の従業員のグリーンカードをスポンサーしているとすると、その2人の従業員が両方とも、すでに設定給与以上の給与を受け取っていれば、この時点でパスすることになり、もし足りない場合は、その差額の合計が会社の純利益以下であればパスし、もしこれをパスしない場合は、会社の純流動資産がこの差額の合計よりも高ければ、審査をパスすることになります。ここで、注意しないといけないことは、例えば2人のグリーンカードをスポンサーする場合、1人は純利益で、もう1人は純流動資産を用いて計算することはできず、2人の合計の金額を純流動資産、あるいは純流動資産で計算しないといけないということです。

上記を参考に、会社の資産表は最終的には決算を閉めてみないと正確な数字は分からないことも考慮し、ある程度の余裕をもってサポートする人数を考えるのが賢明であると言えます。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2023/ 7/ 6

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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