Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2023/ 5/ 3

Vol.95 : グリーンカード申請中に労働許可取得。日本への一時帰国はできる?

Q

私は現在、O-1 ビザでアメリカに滞在し仕事をしています。O-1の期限が切れる直前に3年間の更新の申請を行いましたが、まだ結果は来ていません。しかしアメリカの雇用主を通してグリーンカードも同時に申請しており、先日労働許可が取れました。実は来月に日本での仕事の都合で帰国しなければならないのですが、その際にどのような手続きを取ればよいでしょうか?

A

グリーンカード申請中に労働許可が取れたという場合には、2通りの場合が考えられます。それは「Labor Certification」または「Employment Authorization (EADカードとも呼ばれる)」です。この2つはグリーンカード申請者の間で、しばしば混同され誤解を生む原因となっています。以下、それぞれに区別して説明します。

まず、「Labor Certification」とは「労働許可証」ではなく「労働認可証」と訳すのが妥当かもしれません。しかし、グリーンカード申請者の間では労働許可と言われ、後述の「Employement Authorization」と混同されている場合が多々あります。これは、グリーンカード申請の前半の手続きで、労働局(Department of Labor)が発行するものです。「Labor Certification」は、移民局にグリーンカードの申請を行うことができるという許可であり、これによって就労できる資格があるものでは決してありません。

この「Labor Certification」を取得した後、移民局で I-140 と I-485 の2つの申請を行うことになります。これらを大まかに区分すれば、I-140は雇用主の審査、I-485 は申請者個人の審査が行われるプロセスであると言えます。この I-140 の申請は、「Labor Certification」取得後すぐに開始できますが、I-485 は、申請者の Priority Date における順番が回ってきて初めて申請を開始することができます。ここ数年、ほとんど順番待ちがない状態になっていて、この場合は、I-140 と I-485 を同時に申請することが可能です。

この I-485 の申請を行う以前の段階では、米国からの出入国が可能かどうかは、グリーンカードの申請とは関係がなく、現在のビザステータスがどうなっているかということによります。もし、あなたが取得したのが、後述する「Employment Authorization」でなく、「Labor Certification」である場合、あなたは、更新申請を行っている最中ですので、通常は出入国することはお勧めできません。その場合、更新手続きが完了するまで待つか、あるいは急を要するなら、Premium Processing を申請し、更新手続きを早めることをお勧めします。その場合、移民局に2500ドルを支払うことにより、15日以内に結果を入手することができます。また、この期間を待つことも許されないほど緊急であれば、出国後、日本で更新手続きが完了するのを待って、日本のアメリカ大使館・領事館でO-1ビザを取得した後に米国に帰国することになります。

また、あなたがI-485 の申請を行わず、この手続きを日本のアメリカ大使館で行おうとしている場合(Consular Processing)は、インタビューを日本で受けるまで、米国からの出入国が可能かどうかは(グリーンカードの申請とは関係がなく)ビザステータスがどうなっているかということが問題になり、同様に、上記の手続きを踏むことになります。

次に、「Employment Authorization」は、通常I-485 と一緒に申請を行い、申請後約2~3カ月で取得でき、これを保持することにより就労が可能となるものです。あなたがすでにこの「Employment Authorization」を取得している場合でも、出入国できるかどうかということは、ビザステータスとは関係がありません。つまり、一時渡航許可(Advance Parole)を取得しているかどうかということが問題になります。パンデミック中は、仮に、「Employement Authorization」は下りても、Advance Parole が長期に渡って下りず、ほとんどのケースでは、先にグリーンカードが下りてしまっていました。しかしながら最近ではパンデミック前と同様に、Advance Paroleは「Employement Authorization」と同時に1枚のカードで届く傾向に戻るようになりました。I-485の申請中は、Advance Parole なしで出入国することは大きなリスクです。あなたがそれに該当するのであれば、Advance Parole、あるいはグリーンカードが発行されるまで、アメリカからの出国を避けることをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2023/ 5/ 3

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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