Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2023/ 4/ 3

Vol.94 : アメリカ滞在中に「ESTA」の期限が切れてしまったらどうする?

Q

私は、米国市民の夫との結婚を通して永住権を取得した後、米国市民権を取得しました。最近、長男を出産し日本の母に手伝いに来てもらっていました。母はESTA入国をしているので、ESTAの有効期限の切れる90日までにアメリカを出国し、日本でしばらく待った後、再度アメリカに入国し、私が仕事に復帰した後も子どもの面倒を見てもらう予定でいました。しかし、先日、母が体調を崩してしまい、ESTA入国の90日間が切れる前にアメリカを出国することができなくなってしまいました。このような場合の良い対応策はありますか?

A

まず、ESTA(ビザなし)でアメリカに入国した場合は、他のビザで入国した時と違い、基本的に他のビザステータスに変更したり更新したりすることができません。ただ、唯一、例外として、滞在期間を延ばす方法として「Satisfactory Departure」があります。これは、与えられた90日間の滞在期間中に、やむを得ない事情により出国できない場合、30日までの延長を許可されるものです。実際、パンデミックが始まった2020年は海外渡航が非常に困難だったため、比較的容易に許可が下りていたのですが、最近では、パンデミック前と同様に許可を得るのが非常に困難になっていると言えます。

そこで、本件の場合、お母さまが再度アメリカに来られる予定も考慮すると、出国せずグリーンカードの申請を行う選択肢が考えられます。21歳以上のアメリカ市民権を保持している申請者は、両親のグリーンカードのスポンサーとなることができ、これはグリーンカードの家族申請の中の“Immidiate Family”のカテゴリ―に分類され、これには、米国市民権保持者の配偶者と21歳未満の未婚の子どもが含まれます。この“Immidiate Family”の範ちゅうにある申請の場合は、他のカテゴリー(例えば、永住権保持者の配偶者や子ども)の申請となり、ESTAでの入国の場合であっても申請を行うことが可能であるとされています。

ここで問題視されるのが、アメリカ入国の際にグリーンカードを申請することを目的として、ESTAで入国することが禁止されているということです。しかしながら、本件では、お母さまはESTA入国した際にはグリーンカードを申請してアメリカに永住する意思はなく、入国後、体調を崩したことにより予定を変更したことになるので、後の面接でこの点が問題になることはないと考えます。

従って、あなたが、あなたのお母さまのためにグリーンカードの申請を行えば、お母さまは継続してアメリカに滞在することが可能になります。申請期間は、かなりの幅があり、早い場合で半年、長い場合だと1年を超えることも想定に入れておく必要があります。申請は、I-130とI-485 という書類を移民局に提出します。また、これらの申請と同時に、I-765(労働許可)およびI-131(一時渡航許可)の申請も行うのが一般的です。本件の場合、お母さまが就労をされる可能性は低いと思いますが、労働許可があればソーシャルセキュリティー番号の取得が可能になり、また、ドライバーズライセンスの申請の際にも役に立つので、申請をしておくのが賢明だと考えます。

申請後、約2~3カ月で指紋採取を行います。また、申請後、労働許可および一時渡航許可が送られてくることになっていますが、パンデミック以降、労働許可および一時渡航許可が送られてくることは珍しく、これらを飛ばしてグリーンカードが発行されるケースがほとんどでした。最近では、申請後、約3カ月で労働許可が送られてくる傾向になりましたが、一時渡航許可は、以前と変わらず、送られてこない場合がほとんどです。従って、この申請方法を選んだ場合は、お母さまは、上記の手続き期間の間、アメリカから出国できないことを予定しておく必要があります。申請の最後には、面接が免除される場合とそうでな場合があります。面接に赴く必要がある場合でも、アメリカ市民権の配偶者を通してグリーンカードを申請するような場合は夫婦関係の証明を行う必要があるのに対して、親子関係を証明することは極めて容易なので、特殊な事情がない限り比較的簡単なものになります。面接後、約1~2カ月程度で、指定した住所にグリーンカード送られてきます。

従って、あなたの場合は、お母さまが向こう1年程度、アメリカから出国する必要がなければ、あるいは出国することを避けることができるのであれば、上記の方法によりグリーンカードを申請すれば、今回の期間内に出国できない問題が解消されるだけでなく、次回、アメリカにESTAで再入国する必要もなくなることになります。なぜならば、ESTA入国によるアメリカでの長期滞在および頻繁な入国を行うことはリスクでもあるからです。

また、お母さまがお孫さんの世話をする必要がなくなり、日本で暮らす場合はグリーンカードは放棄することもできます。またRe-entry Permitを申請することにより、アメリカ国外に長期滞在する場合でも、グリーンカード維持することができるようになり、後のアメリカでの長期滞在も可能にします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2023/ 4/ 3

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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