Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2022/12/ 2

Vol.90 : H-1B更新前にDUIで逮捕! どうすればいいの?

Q

私はアメリカで大学を卒業した後、日系の会社で H-1Bを保持して働いています。コロナ禍とはいえ日本での隔離も緩和されたこともあり、今回は日本のアメリカ大使館でH-1Bのビザの更新をしようと思っていた矢先に、飲酒運転で逮捕されてしまいました。私は、今度どのように対応すればよいでしょうか?日本から帰ってきたらグリーンカードの申請も予定したのでとても心配です。

A

移民法における飲酒運転に関する判断は、トランプ前大統領政権の時に非常に厳しく位置付けられることになりました。

DUIも強制送還の可能性あり

まず、飲酒運転の移民法における分類から説明します。犯罪には、強制送還の対象となる犯罪(Crime subject to Deportation)と対象とならない犯罪があります。強制送還の対象となる犯罪は、全ての重犯罪(Felony)および一部の軽犯罪(Misdemeanor)がそれに当たります。軽犯罪の中で、強制送還の対象となるものはDomestic Violenceと道徳に反する犯罪(Crime Involving Moral Turpitude)の2つです。Domestic Vciolence とは、夫婦間(離婚した後の前の夫・妻を含む)あるいは恋人間の暴力行為です。また、道徳に反する犯罪(Crime Invoiving Moral Turpitude)には、麻薬に関する犯罪(Controlled Substances)、詐欺(Fraud)、窃盗(Theft)および暴力に関する犯罪(Crime of Violence)などが含まれます。従って、飲酒運転自体は強制送還の対象になる犯罪には含まれません。

ただし、あなたの場合は、まず飲酒運転で逮捕・有罪となったのが何度あるか、またどのような状況下で捕まったかが問題となります。例えば、カリフォルニア州では飲酒運転であっても4回行うと重犯罪(Felony)となります。飲酒運転は、捕まってから10年以内に行うとそれが加算されます。ここで注意しないといけないのは、加算された時から10年以内に捕まると前回の分も追加されて加算されるということです。

例えば、1回目に飲酒運で捕まった9年後に捕まると、それは2回目となります。その時から数えて9年後に捕まった場合、つまり1回目と3回目の間は18年間あっても3回目として計算されるということです。すなわち、一度も捕まらない期間が10年間無い限り、回数が加算され続けていくことになります。従って、この計算方法により合計4回の飲酒運転になると、強制送還の対象となるということです。また、3回目であっても事故を起こしていたり、2度目であっても人身事故を起こしているような場合は、重犯罪となり強制送還の対象となる可能性があります。

無罪でもビザはキャンセル!

2015年11月5日に飲酒運転に対するビザの規制が施行され、その後、トランプ政権の時にさらにに厳しくなり、逮捕された時点(厳密には逮捕された際に指紋詐取が行われた時点)で、その後の裁判の結果にかかわらず、ビザがキャンセルされることになりました。極端な例ですが、飲酒運転の裁判において無罪の判決が出たとしても、ビザはキャンセルされたままになるということです。ただし、あなたのビザがキャンセルされたからといって、ステータスまでキャンセルされたということではありません。言い換えると、あなたはアメリカ国内に滞在している限り、継続して合法的に滞在および就労することができますが、いったんアメリカ国外に出ると、現在のビザが無効であるため新たにビザを取得しなければなりません。また、あなたの場合、注意しないといけないのは、逮捕された時点から1年以内は、まずビザが発行されることはないということです。

逮捕後1年以上経過してから帰国を

従って、あなたの場合は、日本のアメリカ大使館・領事館において、H-1Bビザを申請するのであれば、逮捕から1年以上経過した後に行くのが得策であると言えます。日本のアメリカ大使館・領事館で面接を受けた際に、医師の診断を受けるように指示されます。この診断では、アルコール中毒・依存症であるか否かの判断がされます。医師が許可を出した後、アメリカ大使館・領事館は、ビザを発行することになります。従って、あなたの場合は、通常よりも日本での滞在期間が長くなることを予定して日本への渡航プランを立てる必要があります。

また、後にグリーンカードの申請を考えているのであれば、日本にビザの申請に行くのではなく、アメリカに滞在したままグリーンカードの申請を行う方法が考えられます。実際、日本に行かなければならない特別な事由がない限り、この方法をお勧めします。特にあなたの飲酒運転歴が2回目の場合は、日本での医師の審査は非常に厳格であるため、リスクを負って日本に行くのは、まずお勧めしません。そして、もし3回目の場合、アメリカでの生活を諦めるのでなければ、ほぼやめた方がよいといえます。

グリーンカードの申請においては、飲酒運転歴がある場合でも、比較的グリーンカードを取得できる可能性は充分あります。とはいえ、グリーンカードを取得した後に日本へ渡航するのが好ましいでしょう。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2022/12/ 2

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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