Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2021/ 7/ 7

Vol.73 : E-1保持者の更新。最新事情を教えて!

Q

私は、3年前に日本の本社から米国の現地法人の責任者として送られてきました。これまでは、主に日本との貿易を行っていましたが、パンデミック以降、商流が著しく減って貿易のみに頼ることが困難になり、会社の事業形態を変えて何とか生き延びてきました。しかし、当社の駐在員のほとんどがE-1ビザ保持者で、その更新が困難な状況です。パンデミックも収束しつつありますが、何か良い方法はないでしょうか?

A

本件に関しては、2つの解決策が考えられます。1つ目は、E-1の更新を行う方法です。E-1ビザとは、米国との通商条約が結ばれている国の国籍を持つ会社がその国と米国間で、貿易を行う際に発行されるビザです。E-1ビザを取得するには、スポンサーとなる会社の株式の50%以上を日本人あるいは日本の会社が所有していること、および、その会社が日本との間で貿易業務を行っていることが主な条件となります。ここでいう貿易とは、通常、商取引(Trade)を意味しますが、これには、商品だけでなく、サービスの交換、売買も含まれます。ここでさらに条件となるのは、あなたの会社の貿易額の50%以上が、日米間で行われている必要があるということです。

もし、あなたの会社がパンデミックの収束と共に、従来と同様のあるいはそれに近い貿易を再開しているのであれば、E-1を更新できる可能性があります。例えば、4月から従来の貿易額に戻っているとすれば、4月、5月の貿易額から予想(予定)される今後の貿易額(Projection)を計算し、その資料を大使館に提出する方法が考えられます。また、取り引き先との契約や注文書などがあれば Projection の補強証拠として有効に働く可能性は高いと言えます。

2つ目の方法は、もしビジネス自体の方向性が変わってしまっていて、今後貿易が再開したとしても従来のような(あるいはそれに近い)日米間の商流が無い場合は、E-2への切り替えが考えられます。E-2ビザでは、E-1が一定の貿易額を要求されるのに対して、一定の投資額が必要です。それ以外の条件は、E-1の場合と変わりません。投資家は、米国の事業に対し「実質的な額」の資本を投資した、あるいは積極的な投資過程にあることが必要であるとされています。

この「実質的な額」の説明としては、以下の3つが挙げられています。

  1. 当該事業の総経費に関連して実質的であること。
  2. 投資家が事業に対し、経済的に現実参加を行っている(経済的なリスクを負っている)ことが充分に考えられる。
  3. 事業の運営を成功させるのに充分であること。

ここで必要な投資額は、約20万ドル(投資元いわゆる株主が会社の場合は30万ドル)以上が妥当とされています。もちろん、これ以下の投資額でも可能ですが、金額が少なければ少ないほどリスクを伴い、多ければ多いほど認可の可能性を上げることになります。(ちなみに認可の可否を決定するのは、主に投資額、総売上高、現地の従業員数の3つの要素です)。

あなたの会社の場合、米国の現地法人を始めてからすでに何年か以上を経過していると思いますので、その間に投資した(投資対象として認められている)全ての投資額を合計することができます。従って、あなたの会社は、おそらく現時点でE-2ビザの条件を既に満たしている可能性が非常に高いと言えます。その場合、まずアメリカの現地法人がスタートしてから現在に至るまで、日本の本社からアメリカの現地法人に資本金として送金した金額の合計を計算します。この時に想定されるのは、現地法人の資本金の設定が小さく、送金額のほとんどが親会社から現地法人への貸し付け処理がされていることです。そのような場合は、資本金の額を上げるため、日本の本社から、アメリカの現地法人への貸し付けを相殺して資本金に組み込むという方法も考えられます。つまり、全ての貸し付けを相殺する必要はなく、必要とされる投資額(例えば30万ドルなど)を充足させる金額のみを相殺すればよいことになります。また、日本の親会社からの送金自体が充分な資本金としての額に達していない場合は、新たに親会社からの送金を増資として行う方法も考えられます。E-1ビザからE-2ビザに切り替える際は、今までにE-1ビザを申請してきた方法とは違い、会社登録から始める必要があり、上記のような Projection に加えて事業計画書を提出するのが有効である場合が多いです。

上記のどちらの選択肢を選ぶかは、今後のビジネスと方向性(貿易中心か否かなど)を含めて考慮し、総合的な見地から判断するのが得策と言えます。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2021/ 7/ 7

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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