Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2021/ 5/ 5

Vol.71 : 帰国せずにアメリカで転職手続きは可能?

Q

私は、日系商社にE-1ビザで勤めていましたが、パンデミックの影響で商流が激減してしまい、それでも会社は頑張って私の雇用を継続してくれていましたが、先月とうとう解雇通告を受けました。日本に帰ることを考えていましたが、友人の紹介もあり、ほかの日系企業への再就職を検討しています。子どももいるので、できればこのような状況の中、日本にある本社に面接に行くことなく、アメリカで転職手続きができればと考えていますが、何か良いアドバイスはありますか?

A

本件の場合は、就職先の会社がEビザの条件を満たしているかによります。Eビザの条件を満たしていれば、アメリカに滞在した状態で転職が可能です。就職先の会社が「1. E-1の条件のみを満たしている」「2. E-2の条件のみを満たしている」「3. その両方の条件を満たしている」など、条件によって手続き方法(ビザの使用できる範囲)が異なりますので、以下で説明します。

まず、E-1ビザは、日米通商条約に基づき、貿易業務に関わる会社の管理職・専門職ためのビザです。E-1ビザの条件は、スポンサーとなる会社が日本国籍を持っていて(株式の50%以上を、米国の市民権もグリーンカードも保持していない日本人、あるいは日本にある会社が所有している)、日本との間で相当量の貿易が行われていることが主な条件となります。E-2 ビザも、日米通商条約に基付いており、日本国籍を持つ人、または日本にある会社が、会社設立のために米国に投資を行う、または米国に現存する会社に投資を行う場合、管理職として業務を執り行うその投資家、あるいは従業員(管理職・専門職)に与えられるビザです。E-1とE-2の違いを端的に言うと、E-1の場合は、当該会社が日米間の貿易により日米通商条約に貢献しているのに対し、E-2の場合は、米国への投資により日米通商条約に貢献している点です。

転職先の会社がE-1の条件のみを満たしている、またはE-1、E-2の両方の条件を満たしている

転職先の会社がE-1の条件のみを満たしている(日米間の相当量の貿易は行っているが、充分な投資は行っていない)場合、およびE-1、E-2の両方の条件を満たしている(日米間の相当量の貿易を行っていて、なおかつ充分な投資も行っている)場合、E-1の雇用主変更の申請を移民局に行うことにより、あなたのE-1をアメリカに滞在しながら新しい会社に移行することができます。これは、あなたが前の会社を最後に辞めた日から(I-94 が有効である限り)60日以内ならば、この申請が可能です。申請期間は、約3カ月から、長い場合は、(パンデミックの影響もあり)6カ月を超える場合もあります。認可が下りるまでの期間は、アメリカ国内に合法的に滞在することはできますが、就労することはできません。申請期間に関しては、「Premium Processing」を利用し、通常の申請料金(460ドル)に2,500ドルを追加で支払うことにより、申請期間を15日に短縮することができます。ただし(2,500ドルは比較的高額のため)、「Premium Processing」 は申請途中で選択することもできますので、上記の手続き期間内に様子を見計らって、「Premium Processing」 に切り替えることを検討することもできます。この申請が認可された後は、あなたの前の会社のビザの有効期限内であれば、アメリカからの出入国も可能になります。あなたの配偶者と子どもは、この切り替え申請を行う必要はありませんが、I-94の有効期限を注意し、必要に応じて延長申請を行う必要があります。

E-2の条件のみを満たしている

転職先の会社がE-2の条件のみを満たしている(充分な投資は行っているが、日米間の貿易は行っていない)場合、雇用主の変更、およびE-1ステータスからE-2ステータスへの変更申請を同時に行うことになります。申請期間などは上記と同じですが、大きく違うのは、あなたの前の会社のビザの有効期限内であっても(パスポートに貼られているビザのタイプとステータスのタイプが一致していないため)、アメリカからの出入国ができないこと、また、あなたの配偶者と子供も、この切り替え申請をあなたと同時に行う必要があることです。アメリカからの出入国を行うには、本申請の認可後、パンデミック終息の頃合いを見て、日本のアメリカ大使館で面接を受け、E-2ビザの発行を受ける必要があります。

あなたの場合、まずは転職先の会社が上記の条件のうちどれを満たしているかを調べ、上記期間内(60日以内)に速やかに申請を行うことが重要であると言えます。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2021/ 5/ 5

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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