Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2020/11/ 20

Vol.65 : ビザはあるけど、滞在許可証が期限切れ寸前。どうすればよいの?

Q

私は、現在、ある日系のアメリカ現地法人で、L-1ビザ保持者として働いています。パスポート上のビザは、あと2年間有効なのですが、滞在認可証が来月に切れてしまいます。7月のトランプ大統領の発表により、今はLビザの申請ができない、また海外への渡航ができないなど、いろいろな話を耳にします。私は、今後どのようにすればよいですか?

A

L-1ビザは、日本を含めたアメリカ国外にある会社(親会社)から、米国内にある会社(子会社)に派遣される人のためのビザです。このビザの主な条件は、米国にある子会社の、原則的に50%以上を日本にある親会社、あるいはその株主が直接的または間接的に所有していること、申請者が申請前の3年間の内、1年間以上は親会社、あるいはその関連会社において管理職(L-1A)または特殊技能者(L-1B)として勤務していることなどが挙げられます。

トランプ大統領が6月22日に行った発表では、確かにLビザに今年一杯の制限を掛けましたが、これは、6月24日の時点でアメリカ国外に滞在していて、しかも6月24日の時点でビザを所持していない人だけが制限の対象となります。従って、あなたの場合は、既にビザを所持しているので、(仮に6月24日にたまたま日本にいたとしても)、この制限の対象にはなりません。従って、あなたの場合は、滞在資格(I-797またはI-94)の有効期限が切れる前に、Lステータスの更新の申請を米国の移民局に行うことにより、アメリカ国内で延長申請ができます。上記の有効期限が切れるまでに、申請書を提出していれば、仮に今の有効期限内に認可が下りなくとも、結果が出るまでは、最大240日までの米国での滞在・就労が可能になります。ただし、現在持っている運転免許証が現在のI-94の有効期限までになっている場合がありますので、注意が必要です。この場合は、Premium Provessing (2,500ドル追加の申請料を支払うことにより審査期間を15日に縮める申請)により早く結果を得るか、あるいは現在のI-94が切れてから認可を得るまでの間、カリフォルニア州の場合は、AB60を利用する方法が考えられます。Lステータスの認可を得た後は、あなたのパスポートにあるビザが有効な限り、アメリカ国外への渡航(出入国)が可能になります。

しかし、ここで注意しないといけないのは、Lステータスの審査基準が他の種類のステータスの申請に比べて顕著に厳しくなっていることです。特に、大企業を優遇する傾向が見られ、一般のいわゆる中小企業にとっては非常に厳しい審査基準が適用されています。さらに、従来までは、更新の場合は比較的緩やかな審査基準であったものが、更新の際も条件などを満たしているか否かに関して再審査を行うとされています。従って、あなたが、前回の申請で認可されたからと言って、更新の際も認可が保証されているわけではない、または認可されることが容易ではない可能性もあるということです。

親会社が上場されていたり、アメリカの会社が非常に高い売り上げがあり、多数の従業員を抱えていたりするような場合は、ほとんど問題が無いと言えますが、あなたの申請の際の状況(特に会社の従業員の数および売り上げ)が、コロナパンデミックなどが原因でよくない場合は、Lステータスの更新を行うのではなく、ほかのステータスへの切り替えも視野に入れた方がよいとも言えます。例えば、Lステータスの条件を備えている場合は、ほとんどの場合が、Eステータスの条件を備えていることになります。Eステータスの条件としては、スポンサーとなる会社の株式の50%以上を米国との通商条約を結んでいる国の国籍を持つ人、あるいは会社(日本人または日本の会社)が所有していること、およびスポンサーとなる米国の会社がその国(日本)と貿易を行っていること(E-1)、あるいはスポンサーとなる会社に一定額の投資を行っていること(E-2)です。Eステータスの申請は、Lステータスに比べて、もちろん個々のケースにより異なりますが、比較的緩やかであると言えます。

Eステータスに切り替えた場合は、そのままの状態では、渡航ができなくなりますが、日本のアメリカ大使館で面接(日本のアメリカ大使館は、LおよびEビザの面接受付を再開しています)を受けることにより、Eビザを取得し、その後の渡航を行うことができるようになります。また、Eステータスの場合は、Lステータスの場合と異なり、最大延長期間に制限がありません。従って、あなたの会社の状況が著しく悪い場合は、渡航することを一旦諦め、会社の状況が改善された後に、日本のアメリカ大使館にて面接を受けるという策も考えられます。

上記の諸条件・状況を鑑み、あなたの会社の状況に応じた、的確な判断を行うことをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2020/11/ 20

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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