Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2020/ 4/ 14

Vol.58 : 新型コロナウイルスの影響で学費が払えない!卒業前に働く方法はあるの?

Q

私は、4年前に渡米し、現在、コンピューター・サイエンスを専攻して大学で勉強しています。しかし、今回の新型コロナウイルスの影響を受けて、日本で父が経営している会社が経営困難のため、今後仕送りを受けるのが難しくなってきました。残り1年で卒業できるので、今まで続けた勉強を諦めたくありません。実は、以前インターンをしていた会社でバイトをすることもできるのですが、将来のことを考えると不法に就労したいとも思いません。卒業すれば、OPTを申請できることは知っていますが、卒業前に合法的に働く方法はありますか。

A

あなたの場合、実家の会社が今回の新型コロナウイルスの影響を受けて経営困難になったという事実から、まず、Unforeseen Economic Necessity(Severe Economic Hardship)の申請を考えることができます。これは、米国入国時には学校を卒業できるだけの資金源があったにもかかわらず、学生のコントロールの及ばない範囲で事情が変わった場合、学校と移民局の許可を得ることにより就労することができるものです。これには、両親の失業または入院による膨大な医療費の出費で継続して就学を続けることが困難な場合などが例として挙げられます。ここでの重要なポイントは、米国入国時には予期していなかった事情の発生が、学生側の原因で起こったのではないということです。今回の新型コロナウイルスによる経済的影響が、実家のビジネスにまで及んでしまったという出来事は、あなたが今通っている大学に入学した時には予期できなかったと容易に言えるので、(移民局の審査官の個々の判断によりますが)これが理由として認められる可能性はあります。

また、上記の申請方法以外に、あなたの場合は、Practical Trainingの利用が考えられます。Practical TrainingにはCurricular Practical TrainingとOptical Practical Trainingの2つがあります。また、Optical Practical Trainingには、Pre-CompletionとPost-Completionがあり、Pre-Completuon はコースワーク終了前、Post-Competionはコースワーク終了後のもの(これを指してOPTと呼ばれている場合が多いです)を指します。ですから、あなたのように卒業する前であってでも、Curricular Practical Training、あるいはOptical Practical Trainingの中のPre-Completionによって就労できる可能性があります。

まず、Curricular Practical Trainingは、フルタイムの学生として9カ月以上学校に通い続けた後、学校のDSO(Designated School Official)の許可を得ることで、学期中は週20時間まで、休暇(Vacation)や休日の間は、その後の学期の授業に参加することを前提としてフルタイムで就労することができます。職種の選択にあたっては、学生の専攻する学術領域に限られます。次に、Optional Practical Training (Pre-Completion)は、Curricular Practical Trainingと同じようにフルタイムの学生として9カ月以上学校に通い続けた後、学期中は週20時間まで、休暇の間はその後の学期の授業に参加をすることを前提としてフルタイムで就労することができます。職種の選択にあたっては、同じように学生の専攻する学術領域に限られます。Curricular Practical Trainingとの違いは、学校のDSOの許可および移民局の許可を必要とすること。そして就労期間が、フルタイムで1年(週20時間のパートタイムならば2年に換算)までに限られていることです。さらに、後にOptional Practical TrainingのPost-Completionを申請した場合、その期間(1年)から、Pre-Completionで就労した期間を差し引かれることです。これに対して、Curricular Practical Trainingで就労した期間は、Optional Practical Trainingの就労可能な期間(Pre-Completion と Post-Completion を併せて1年)より差し引かれることはありませんが、フルタイムで1年間就労した場合は、Optional Practical Trainingを申請することができなくなります。従って、Curricular Practical Trainingでフルタイムの就労した後に、Optional Practical Trainingを申請する予定があれば、1年より1日でも短い期間の就労にすることをお勧めします。

また、上記以外、あるいは上記に加えて、On-Campus Employmentの可能性も考えられます。キャンパス内ならば、学期中は週20時間まで、休暇の間はその後の学期の授業に参加することを前提として、フルタイムで就労することができます。リサーチ・アシスタントなどが代表的な例として挙げられますが、キャンパス内ならば、書店やカフェテリアなど雇用主が学校自体でなくてもかまいません。On-Campus Employmentの場合は、移民局の許可を直接得る必要はありませんが、学校自体が許可制にしている場合があるので、就労前にInternational Student Officeで相談することをお勧めします。

最後に、冒頭で述べたSevere Economic Hardshipの申請は、申請すれば必ず貰えるというわけではなく、個々のケースに応じて審査官が判断することになります。あなたの場合、例えば、まずCurricular Practical Trainingの申請ができるか否かを学校のDSOに確認を取り、もし、この申請が可能ならば、Severe Economic Hardshipの申請を行う必要はなく、申請期間を短縮できる可能性も高く、またSevere Economic Hardshipの申請のための費用を支払う必要もなくなります。このように、個々の状況を考慮した上で、上記のどの申請方法を選択するかを判断することをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2020/ 4/ 14

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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