Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2019/ 8/ 13

Vol.50 : プラクティカルトレーニング後の労働ビザは?

Q

今年の6月に大学を卒業してから、ある日系の流通会社に勤めていますが、来年の5月いっぱいでプラクティカルトレーニングが切れてしまいます。引き続きこの会社で働き続けたいと考えており、会社もビザのスポンサーになってくれるのですが、私にはどのような労働ビザの可能性がありますか?

A

あなたの場合、H-1B、E-1、E-2、H-3の4つの労働ビザの可能性が考えられます。

H-1B

もしあなたが学士号(Associate degreeではなくBachelor's degree)を保持しているのであれば、H-1Bビザの申請が考えられます。H-1Bビザ取得の条件としては、以下のことが挙げられます。

  1. 学士号以上、あるいはそれに匹敵する経験を保持していること。
  2. その業種においては、通常、学士号以上が要求されており、その職務は、学士号以上を保持するものでないと遂行できないほど、複雑かつ特殊であること。
  3. 雇用主が、その役職に従事するものに対して、一般的にその学士号以上を必要としていること。
  4. 職務内容が専門的かつ複雑であり、その職務を行うにあたっては、通常その学士号以上の知識を必要とすること。

専門職とされる職種としては、会計士、経営コンサルタント、教師、コンピューターエンジニア、建築家、翻訳家などがあります。これらの職種を遂行することにあたって必要とされる学歴(コンピューターエンジニアであればコンピューターサイエンス専攻)あるいは職歴があり、スポンサーとなる会社でその職種が必要とされているのであれば、H-1B ビザの取得が可能です。H-1Bビザは最高6年(永住権の申請を始めて1年以上経過しているとそれ以上)まで延長することができます。ただ、あなたの場合の問題は、H-1Bでは抽選の可能性があるため、この抽選に選ばれない可能性も大いにあります。ただし、一旦、抽選に選ばれれば、あなたの OPT が最長9月末までで、 H-1B の審査の結果が出るまで延長されることになります。

E-1

E-1ビザは、日米通商条約に基づき、貿易業務にかかわる会社の管理職ためのビザです。E-1ビザを取得するには、スポンサーとなる会社が日本国籍を持っていて(株式の50%以上を、米国市民権もグリーンカードも保持していない日本人、あるいは日本にある会社が所有しているということ)、日本との間で貿易が行われていることが主な条件となります。あなたの会社のように流通を行っているのならば、E-1ビザの申請の可能性が考えられます。このビザを取得するためには、前述のH-1Bビザとは異なり、学士号を保持している必要はありません。もしこれらに当てはまるようであればE-1 ビザの申請が可能です。このE-1ビザはその資格を維持する限り最大延長期間の制限はありません。

E-2

E-2 ビザも、日米通商条約に基いており、日本国籍を持つ人、または日本にある会社が会社設立のために米国に投資を行う、または米国に現存する会社に投資を行う場合は、管理職として業務を執り行うその投資家、あるいは従業員に与えられるビザです。この場合、投資家は、米国の事業に対し「実質的な額」の資本を投資した、あるいは積極的な投資過程にあることが必要であるとされています。この「実質的な額」の説明としては、1)当該事業の総経費に関連して実質的であること、2)投資家が事業に対し経済的に現実参加を行っている(経済的なリスクを負っている)ことが充分に考えられる、および3)事業の運営を成功させるのに充分であること、が挙げられています。もしあなたの会社が上記の条件に当てはまるようであれば、E-2ビザの申請が可能です。E-2ビザも、E-1ビザ同様、その資格を維持する限り最大延長期間の制限はありません。

H-3

H-3ビザは米国においての研修を目的としたビザです。H-3ビザも、学士号やそれと同等の職歴を保持している必要はありません。H-3ビザを取得するためには、その研修が母国では得られないということ、研修後米国外での職務を遂行するのに役立つものであるということ、研修生を雇うことが外国労働者の雇用に取って代わるものではないということ、そしてその研修があくまでも研修生をトレーニングするものであり、生産性を伴うものではないということを証明する必要があります。従って、日本では得られないような特殊な業務内容を行っているという理由から取得するこのH-3ビザは、最高で2年まで保持することができ、2年の満了後は、他のビザステータスに切り替えることは困難です。ただあなたの場合は、すでにプラクティカルトレーニングにて研修を受けていると判断される場合がありますので、トレーニングが1年間では終了しなかったことの明確な説明を行ったほうが良いでしょう。また、近年では、H-3 の審査基準がかなり厳しくなっているため、(条件が充分に揃っていないような場合)安易にこの申請方法を選んでしまうのは避けた方が良いと考えます。

ビザの選択に関しては、会社の業務内容、あなたの学歴、職務経験、また米国滞在予定期間などを考慮に入れて、あらゆる可能性を考えた上で、その中からあなたに最適なビザ申請を選ぶことをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2019/ 8/ 13

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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