Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2019/ 1/ 23

Vol.43 : LやHビザ保持者の運転免許更新について

Q

L-1Aビザで3年間ほどロサンゼルスに住んでいます。現在、会社の弁護士を通して、ビザを3年間延長する手続きを行っている最中ですが、カリフォルニア州の運転免許証の有効期限が、あと数日で切れてしまいます。ところがDMVオフィスの受付で、新しい「I-94」がなければ免許証の更新ができないと言われてしまいました。弁護士には「(I-94の)結果が出るまであと数カ月かかる」と言われていますが、日常生活において運転免許証がないと困ります。どうすればいいでしょうか?

A

L-I(企業内転勤者)ビザやH-1B(特殊技能職)ビザなど、既存の就労ビザ・ステータスの 延長申請をアメリカ国内で行う場合は、出入記録(I-94)に記載された滞在許可期間を超えても、240日間は滞在かつ就労が可能です。しかし、車両管理局(DMV)のレギュレーション上、カリフォルニア州運転免許証の有効期限はI-94の期限に設定されてしまうので、あなたの場合、L-Iビザ延長申請の結果発表に間に合わず、このままだと運転免許証の有効期限が切れてしまう危険があります。ご存知の通り、カリフォルニア州での無免許運転は犯罪行為です。

しかし、カリフォルニア州のDMVは、あなたのような状況の人のために「AB60」運転免許証を交付することが可能です。不法移民にも運転免許証の発行を許可するために考案されたこの法律は、2015年1月に施行されました。現在、カリフォルニア州を含む12州と首都ワシントンでも不法移民に対して運転免許証の交付が法で認められています。

交付される「AB60」運転免許証にはDriver's Licenseを表わす「DL」の代わりに、Driver's Privilegeを表わす「DP」と表記され、「このカードは車の運転のみを認めるものであり、就労や公益を受ける資格は認められない」との記述が印刷されます。昨年4月にDMVは今までに100万以上の「AB60」運転免許証を発行したと発表しました。

「AB60」運転免許証は交付されると1年間有効です。既存のカリフォルニア州の運転免許証を持っている人は、筆記試験や運転試験を受ける必要はありません。必用書類のリストはDMVのウェブサイトで日本語でも公開されています。指定のパソコン端末で申請者情報を記入し、視力検査と写真撮影の後、申請費用35ドルをDMVに支払えば、その場で60日間有効な仮運転免許証を発行してもらえます。ただし、クレジットカード支払いは受け付けていないので、ご注意下さい。通常は2~3週間以内に「AB60」運転免許証が自宅に郵送されてきますが、場合によっては3~6カ月かかることもあります。

このようにメリットの多い「AB60」運転免許証ですが、問題視されていることも数多くあります。まず、正規の運転免許証を保持している場合、DMVはI-94期間が切れるまで「AB60」運転免許証の申請を受理しません。つまり大抵の場合は、運転免許証が切れる当日まで「AB60」運転免許証に切り替えることができないということです。ほかにも、2018年1月22日より導入された「正当な身分証明法(リアルID法)」に基づくカリフォルニア州の運転免許証の交付への移行作業により、今まで以上に「AB60」運転免許証の発行が遅れる傾向にあります。

2001年9月11日に起きた米同時多発テロを起因としたリアルID法とは、米国の安全を強化する対策として「運転免許証のような身分証明書の発行基準を統一する」ことを米国各州に義務付ける法律です。2020年10月1日に完全に執行される予定のリアルID法により、カリフォルニア州の運転免許証発行に関して、より国土安全保障省(DHS)の関与が必要となったことによって、非移民ビザ保持者やグリーンカード保持者、アメリカ国籍を取得した人のカリフォルニア州の運転免許証取得の進行に、やや遅れが出始めていると報告されています。

ここで一番問題視されているのは、単純にDMVスタッフの「AB60」運転免許証に対しての知識が乏しい場合が多いということです。「AB60」法が執行されて3年が経つ今でも、必用書類を受け付けてくれない場合や、「移民局に報告する」とDMVスタッフに言われた、「AB60」運転免許証を取得すれば「現在進行中のビザ申請が却下される」と言われた、「バックグラウンド・チェックに6カ月かかるから申請するのは無駄だ」と言われたなど、実際に当事務所のクライアントさまからも、さまざまなご報告をいただいています。

解決法は、めげずに違うDMVオフィスに行くことですが、根気を必要とする(かもしれない)「AB60」運転免許証を取得したい場合は、まず、移民法弁護士と相談することをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。
今回のコラムニスト
Attorney大橋 幸生

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)を卒業後、アメリカ法学博士号(JD)を取得。アメリカ法全般における判例リサーチの経験をもとに、総合的な見地からの移民法のアドバイスを行う。

Updated on 2019/ 1/ 23

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taki@takilawoffice.com

Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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