Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2018/12/ 24

Vol.42 : 市民権申請中。日本支社に移動した場合の問題点は?

Q

私はアメリカ市民になることを考えています。今はアメリカの大手自動車メーカーに勤務していますが、来年は日本支社に異動する可能性があります。このような状況でも市民権を取得することは可能でしょうか?

A

アメリカ市民権を取得するには、米国移民局(USCIS)にフォームN-400を提出する必要があります。フォームN-400は、USCISウェブサイトから、ネット上で提出、もしくはUSCIS指定のロックボックス施設(お住まいの地域によってはアリゾナ州、テキサス州、イリノイ州のいずれか)に郵送することによって、申請可能です。申請費用は(指紋採集費用を含めて)725ドルです。過去には、75歳以上の方は、指紋採集手続きが免除されていましたが、USCISは2017年7月26日よりそのポリシーを廃止しました。

申請者の基本的な条件は、以下8つとなります。

  1. 18歳以上であること。
  2. グリーンカードを取得して5年経過していること。
  3. 申請の日付から過去5年間、グリーンカード保持者としてアメリカで常に住居を保っていたこと(注:この条件“Continuous Residence“は、宣誓式より市民権を取得する日まで継続する)。
  4. 申請の日付から過去5年間の間、その期間の半数、少なくとも30カ月(913日間)は、国外ではなく、アメリカに滞在していたこと(注:この条件“Physical Presence”はアメリカから出国した日、入国した日もアメリカに「滞在」していたとみなされる)。
  5. 申請の日付から過去3カ月は、移民局フィールドオフィスの管轄区域に住む必要があること。
  6. 申請の日付から過去5年間、高い道徳心“Good Moral Character”を持っていること(注:この条件は宣誓を行う日まで継続する)。
  7. アメリカ国家憲法に従い、アメリカの繁栄に貢献する意思があること。
  8. 英語で会話ができる上に、読み書きもでき、アメリカの歴史や政府においての基本知識をもっていること。

アメリカ国籍の配偶者がいる場合は、一般的にはグリーンカードを取得して3年後から申請が可能です。条件も上記の「過去5年」ではなく「過去3年」と少し異なり、さらには市民権を取得する日まで配偶者と同じ住居“Living in Marital Union”で生活をしていたことを立証する必要があります。ちなみに、④の“Physical Presence”条件は18カ月(548日間)で計算されます。2年間に有効期限が制限される「条件付グリーンカード"Conditional Green Card"」保持者であっても市民権申請は可能です。ほかにもアメリカ国籍の配偶者がアメリカ政府関連の職業で連続1年以上国外で就労していた場合や、アメリカ国籍の配偶者がアメリカ軍組織に所属している場合など、取得条件が異なる申請方法もあるので、市民権取得を考えているあなたにアメリカ国籍の配偶者がいる場合は、移民法弁護士とケースの相談をすることをお勧めします。

フォームN-400の提出は、➂の条件が満たされる日付より90日前から可能です。例えば、グリーンカード保持者としてアメリカでの居住が5年間(もしくは3年間)を満たす日付が2010年6月10日だった場合は、2010年6月9日より90日前からの提出が許可されます。フォームN-400を提出してから約1カ月で指紋採集手続きが行われ、その10カ月前後で面接を受けることになります。

合格すれば約1~2カ月の間に宣誓式が行われます。宣誓式でアメリカ国旗に忠誠を誓えば、市民権取得の証明“Naturalization Certificate”を手渡されます。その書類に署名をすれば、あなたは晴れて米国市民です。

あなたの場合は、異動が決定すれば、将来的には日本で就労かつ居住することになるので、市民権申請の条件を満たせなくなる可能性があります。特に、➂の市民権を取得する日まで“Continuous Residence”を保持する条件は、客観的にみて立証することはほぼ無理でしょう。しかし、このような状況でも、ある条件下で市民権の取得資格を保つことが可能です。①申請者はアメリカ国外で就労を開始するまでに、グリーンカード保持者として連続で1年間アメリカ国内に滞在していたこと(一度でも国外に出た場合は申請が無効になる)、②申請者はアメリカ国外で当該組織(㋐アメリカ合衆国司法長官が定めたアメリカ政府関連、もしくはアメリカ国研究施設、㋑業務内容にアメリカを含む貿易業務が含まれる株主の50%以上がアメリカ国籍である会社、あるいは国外で法人登録済みの当該会社の子会社)で継続して1年以上働いていないこと。➂条約や法律によりアメリカ国家が可決メンバーである多国籍組織(例:世界知的所有権機関WIPO)に勤める(あるいは勤めている)場合は、移民局フォームN-470を提出し、8カ月間の(場合によっては面接時に)審査期間を経て、承認されれば➂の条件のみが免除されます。

移民局フォームN-470は申請費用が355ドルです。移民局ロックボックス施設、テキサス州ダラス市まで、フォームN-470と申請費用を含む申請書類セットを郵送する必要があります。

市民権取得に必要な申請フォームN-400は、比較的簡単に記入できることで知られていますが、フォームN-470の提出が必要な場合は、申請の難易度が飛躍的に上がるので、まずは移民法弁護士と相談することをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。
今回のコラムニスト
Attorney大橋 幸生

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)を卒業後、アメリカ法学博士号(JD)を取得。アメリカ法全般における判例リサーチの経験をもとに、総合的な見地からの移民法のアドバイスを行う。

Updated on 2018/12/ 24

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taki@takilawoffice.com

Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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