Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2017/ 6/ 14

Vol.24 : H-1B雇用主変更の手続き

Q

私は現在、H-1Bビザで、ある日系のIT関連会社に勤務しています。最近、他の同業種の会社から、誘いの声がかかりました。私としては、この声をかけてくれた会社の方が学べることも多いので、転職したいのですが、どのようにすれば良いでしょうか?新しい会社からは、できるだけ早く来て欲しいと言われています。

A

あなたの場合は、新しい雇用主に早く動くことを優先するか、あるいはステータス(米国での滞在資格)を保持することを優先するかで、手続きの進め方が変わります。それを以下で説明します。

まず、H-1Bビザは専門職ビザと言われるもので、その申請を行うには、申請者が4年制大学を卒業しているか、それに相当する職務経験があること、また当該行われる職務内容が4年制大学を卒業しているか、それに相当する職務経験がないとできないほど複雑かつ専門的であること、および4年制大学あるいはそれに相当する職務経験で学んだことを生かすことができる職務である必要があります。移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、そして実質的な適用、応用が要求される職種で、例えば、建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野であり、またその職種に就くにはアメリカにおいて通常、学士号、あるいはそれ以上の学歴、またはそれに値する経験が必要とされる職種を指すとされています。具体的な職業としては、会計士、経営コンサルタント、コンピューター・エンジニア、建築家、翻訳家などがあります。これらの職種を遂行するにあたって、必要とされる学歴あるいは職歴(コンピューター・エンジニアであればコンピューター・サイエンス)を保持し、スポンサーとなる会社でその職種を必要とされているのであれば、H-1Bビザ申請の条件を満たすことになります。

あなたの場合、新しい会社での合法的な就労資格を得るには、H-1Bのトランスファーの手続きを行う必要があります。これは、新しい会社が申請者となって移民局に申請書を提出することによって行います。この場合、毎年4月に行われているH-1Bの抽選の対象にはなりません。この申請書を提出した後、約3カ月程で認可、あるいは追加資料の請求が来ます。追加資料の請求が来た場合には、その請求された資料を提出した後、約1~2カ月で認可、あるいは却下の通知が来ることになります。そしてここで、いつから新しい会社に動けるか、あるいは動くかということが問題になります。まず、法的には、この申請書を移民局が受け取った時点で、新しい会社で働き始めることができるとされています。ただし、この場合、万一、申請書が却下された場合は、新しい会社で働くことができなくなるだけでなく、もとの(現在の)雇用主のもとに戻ることもできなくなり、却下通知に記載されている日より1カ月以内にアメリカを出国しなければならなくなります。

従って、現在のステータスを維持するという安全性を優先するのならば、結果が分かるまで、現在の雇用主のもとで働き続けるのが得策と言えます。そうすることにより、万一、申請が却下された場合でも、現在の雇用主のもとで働き続けることに問題はなく、また事情が許す限り、再度、申請書を提出するという選択肢も残されます。(結果を待たずして新しい会社で働き始め、却下された場合は、この再申請の間、日本などの米国外で待つことになります。)この場合、Premium Processing (通常の申請料に加えて1,225ドルを余分に支払うことになります)を使って申請すれば、上記の審査期間をそれぞれ15日以下ほどに縮めることができます。

このトランスファー(雇用主の変更)の手続きは、必ずしも同じ業種の会社間で行う必要はなく、申請者が大学で学んだ内容(専攻)が、その会社で生かすことができる役職が存在する限り、異業種の会社間で行うこともできます。また、トランスファーが完了した後は、前の会社でのビザ(パスポートに貼られているH-1Bビザのこと)が有効な限り、新しい会社のもとでの移民局からの認可証と前の雇用主からのH-1Bビザにより、アメリカへの出入国も可能で、日本のアメリカ大使館・領事館で面接を受けて新たにH-1Bビザを取得する必要もありません。

H-1Bの最大延長可能年数は6年で、この間、何度雇用主の変更を行っても構いません(厳密には、変更後の会社で1カ月以上働いた時点で、次の雇用主の変更が可能です)が、この最大延長期間の6年は、変わりません。雇用主変更の申請は、新しい雇用主がどれだけ早くあなたが働けるようになることを期待しているかということと、あなたのステータスを維持するということの双方をバランスよく考慮し、申請されることをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2017/ 6/ 14

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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