Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2024/ 1/ 5

Vol.103 : 2025年に帰任の可能性。1年半でグリーンカード取得は可能か?

Q

私は、パンデミックの始まった2020年にL-1ビザで駐在員として渡米しました。事態の収束とともに、家族もアメリカの生活に親しみ、特に妻と子どもは今後もアメリカでの生活を強く望んでいます。ただ、私は来年いっぱいで6年間の任期が切れ、それ以降もアメリカに残れる可能性はありますが、帰任命令が出るかもしれません。本来ならばグリーンカードを取得できると思うのですが、もし会社の判断で帰任となってしまうと、取得までの時間はないように思います。私の家族にとって何か良い策はあるでしょうか?

A

あなたの場合、仮に帰任になるとしても、少なくとも約1年半の猶予期間があるので、会社があなたの状況を理解しスポンサーとなってくれるのであれば、来年いっぱいまでにグリーンカードを取得できる可能性があります。

移民局は、2023年1月30日に「プレミアム・プロセッシング(Premium Processing)」の適用を「EB-1C(Mutinational Executives and Managers)」のカテゴリーにも適用させることを発表しました。「プレミアム・プロセッシング」とは、従来の申請料(700ドル)に加えて、2500ドルの追加料金を支払うことにより、例えば、このカテゴリーの場合、手続きの第1段階(第1段階の手続きは「I-140」と呼ばれ、その後「I-485」あるいは「コンサラー・プロセス(Consular Process)」の2段階で終了)で従来まで1年近くを要していた手続き期間を、45日に縮めることができる手続きのことです。

「I-140」の申請書を提出後、45日間以内に、認可、却下、あるいは追加資料の請求が来ることになります、追加資料の請求が来た場合は、その必要資料を提出後、さらに45日間以内に、認可、あるいは却下の通知となります。従って、あなたがこの「EB-1C」のカテゴリーに含まれるのであれば、1年半の期間内に2段階目の手続きまでを完了できる可能性があると言えます。

「EB-1C」の要件は以下の通りです。

  1. 日本(海外)にある会社とアメリカにある会社が親子関係にあること。これには、アメリカにある会社の50%以上の株式を日本(海外)にある会社が所有している場合、または、アメリカの50%以上の株主が日本(海外)の会社の50%以上の株式を所有している場合も親子関係にあるとみなされます。あなたの場合は、L-1ビザを所持しているので、この条件は満たしているはずです。
  2. アメリカの会社で、部長、重役クラスなどの管理職に就いていることです。一般的に、これに関して、申請者の下に部下がいるということだけでは充分でなく、申請者の下に部下を持つ部下がいることが要求されます。言い換えると、会社の組織図において申請者の下に2段以上のピラミッド型の管理体系があることが必要ということです。「EB-1C」 の申請を行うには、申請者の下に、少なくとも合計で8~10人以上の部下がいた方が良いと言えます。
  3. LビザあるいはEビザでアメリカに入国する前の過去3年間のうち、少なくとも1年間以上、部長あるいは重役クラスなどの管理職として日本(海外)にある親会社(子会社、系列会社でも良い)、またはその関連会社において勤務していたことが最後の要件になります。この場合も、アメリカの会社での場合と同じように、申請者の下に2段以上のピラミッド体系があったこと、および少なくとも合計で8~10人以上の部下がいたことが必要となります。

この申請方法は2通りあり、上述の「I-140」の申請書に加えて「I-485」あるいは「コンサラー・プロセスの手続きを踏むことになります。「I-485」の申請を選ぶ場合は、「I-140」と「I-485」を同時に申請することができます。「I-485」を選ぶメリットは、全ての手続きをアメリカ内で行うことができることです。ただ、一般的には「I-485」の申請を行うと、「アドバンス・パロール(Advance Prole)一時渡航許可」が認可されるまで、アメリカ国外への出入国ができなくなります。パンデミック以降、この「アドバンス・パロール」の発行が深刻な手続きの遅滞を起こしていましたが、最近では改善されている傾向にあるといえます。あなたの場合は、Lビザを持っているので、「I-485」提出以降、「アドバンス・パロール」なしで出入国が許されるという例外規定が適用されまず。ただ、Eビザ保持者には適用されないので「アドバンス・パロール」が発行される前に出入国が必要な場合(例:毎月、日本の役員会に出席しないといけないなど)は、「コンサラー・プロセス」を選択することになります。この場合は、手続きの最後に日本のアメリカ大使館において面接を受けることになります。

「EB-1C」の手続きには、準備の段階でかなりの資料を必要とするため、あなたの場合には、早期に判断および準備を開始することをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2024/ 1/ 5

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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