Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2023/11/ 6

Vol.101 : アメリカ進出を検討。最適な駐在ビザは?

Q

弊社は、日本でアイデアグッズの販売を行っていて、アメリカにも取引先が数社あります。日本の市場はすでに限界があると見越しているため、アメリカの取引先拡大を考え、現地法人を設立することを計画しています。弊社社員を駐在員として送り、現地での管理およびマーケティングを行おうと考えています。そこで、駐在員のためのビザの申請を行いたいのですが、ビザを申請するには、数十万ドルの投資を行う必要があると聞きました。しかしながら、弊社の事業は貿易であるため、アメリカで資金を使う使い道がありません。また、ビザのためだけに無駄な資金を使うことを、本社の役員が承認するとは思えません。このような状況で、駐在員がアメリカに滞在するのに適したビザはありますか?

A

日本の会社がアメリカに進出する際、駐在する方のために申請するビザには「Lビザ」「E-1ビザ」および「E-2ビザ」の3通りが考えられます。今回は、それぞれの可能性について検討したいと思います。

Lビザ

以前は、このようなケースの場合、取得期間が極めて短くて済むLビザを用いるのが一般的でした。しかしながら、トランプ政権以降、Lビザの審査基準が著しく上がり、続くバイデン政権下でも、幾らかの緩和は見られるものの、あなたの会社でアメリカにおいてかなりの規模の会社(特に現地での従業員の雇用)を予定していない限り、得策ではありません。

E-2ビザ

E-2 ビザは、①日本からの投資を行い、その後、②現地のアメリカ人などの従業員を雇い、③営業を開始した後に申請を行うことになります。ここで、①投資に関してですが、「日本から投資を行う」ということは、日本からアメリカの会社に資本金の送金を行うだけでは認められず、その資金を「初期投資」と呼ばれるものに使う必要があります。ここで言う「初期投資」とは、ビジネスの買い取り、内装費、機材等の購入費等が含まれますが、仕入れ、毎月の家賃、給与などのいわゆる営業上、循環する資金は、一般的に認められないことになっています。(家賃、給与で、「初期投資」に含まれるのは、初回のみです)。そこで、本件の場合は、あなたの言う通り、貿易を行う会社において、「初期投資」として、例えば、20万ドルを使うことは、難しい場合がほとんどです。また、E-2 ビザを取得するために、あまり必要でないものに出費することも、ビジネスとして得策ではないと言えます。

そこで、御社の場合は、E-1 ビザの選択肢を考慮するのが最も効果的かもしれません。E-1ビザとは、アメリカとの通商条約が結ばれている国の国籍を持つ会社がその国とアメリカ間で、貿易を行う際に発行されるビザです。E-1ビザを取得するには、スポンサーとなる会社の株式の50%以上を日本人あるいは日本の会社が所有していること、および、その会社が日本との間で貿易業務を行っていることが主な条件となります。ここで言う貿易とは、通常、商取引(Trade)を意味しますが、これには、商品だけでなく、サービスの交換、売買も含まれます。

本件の場合は、まず、アメリカにあなたの会社の子会社を設立し、その子会社の銀行口座を開設します。その後、日本の会社からその口座に資本金の送金を行います。ここでは、E-2 ビザで要求されるような多額の資金を必要としません。ここでは、5万ドル~10万ドル位の資本金の設定が妥当だと考えます。また、この資本金も、送金を行えば、その後、E-2 の場合のように、無理に使う必要もありません。その後、事務所の賃貸を行い、現地の従業員を雇うことになります。これは、E-2 の場合も同じです。ここで、従業員の雇用に関してですが、Eビザの申請者は管理職である必要があり、この「管理職」とは、部下を持つ者と定義されます。言い換えると、会社の組織図を描く際に、申請者の下に2段以上のピラミッドが形成されている必要があります。従って、この申請においては、申請者の部下と言える従業員が3人以上いることが好ましいです。その後、日米で貿易を行う必要がありますが、E-1 ビザでは、申請前に複数の貿易の取引(Mutiple Transactions)があることが要求されますので、最低でも、2カ月、できれば3カ月以上の日米の貿易の取引が必要です。ここまでに条件(準備)がそろえば、日本のアメリカ大使館・領事館に申請書を提出することになります。申請書提出後、約2~4カ月で、(追加資料の請求が無い限り)アメリカ大使館・領事館から面接の通知が来ることになります。この面接の予約を入れ、面接後は、約1週間でE-1ビザが発行されます。

あなたの場合は、上記の条件、手順を参考に、計画的に手続きを進めることをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2023/11/ 6

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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