Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2023/10/ 2

Vol.100 : 日本の従業員が「E-2ビザ」を早く取得できる方法はある?

Q

弊社は、現在日本とアジアでレストランビジネスを展開しています。昨年、アメリカにも1号店を出店し、日本からE-2ビザを取得した従業員が渡米して仕事に従事しています。1号店の経営も落ち着いてきたので、来年には2号店のオープンを予定しています。しかし、パンデミックが落ち着く方向に向かうとともに、深刻な人手不足の影響を受け、2号店を運営できるだけの十分な数の従業員を雇えそうにありません。そこで、1号店の時と同じように日本からスタッフを連れてきたいのですが、1号店でのE-2ビザの手続きの際、申請に予想以上の時間を要し、レストランの立ち上げに大変苦労したのを覚えています。2号店オープンの際は、同じような状況をできるだけ避けたいと考えています。何か良い方法はないでしょうか?

A

本件の場合は、2号店の会社の形態をどのようにするかによって、E-2ビザの手続き期間を短縮できるかどうかが変わります。以下それに関して説明します。

まず、E-2(投資家)ビザは、アメリカと通商条約が結ばれている国(日本は日米通商条約があるので、その中に選ばれています)の国籍を持つ人あるいは法人(会社)が、アメリカ国内にある会社などの事業に投資することによって、その事業の所有者、管理職者、あるいは特殊技能者に対して発行されるビザです。E-2ビザを取得するには、スポンサーとなる会社の株式の50%以上を日本人あるいは日本の会社が所有していること、およびその会社の資本金が日本より投資されている必要があります。日本にある会社が株主である場合は、その会社の株を所有する日本人の割り合いで決められることになります。本件の場合は、アメリカの会社にすでにE-2ビザを持っている従業員がいるので、日本のアメリカ大使館・領事館におけるE-2ビザ発給の会社登録が完了していることになります。

ここで、2店舗目のレストランを始めるにあたって、1)同じ会社で運営する方法と、2)別会社を設立する方法の2つの選択肢が考えられます。以下、それぞれの方法の方法に関して、長所、短所を含めて説明します。

  1. 1店舗目と同じ会社で2店舗目のレストランを運営する場合は、この会社での会社登録はすでに完了しているため、日本か新しい従業員の人を呼び寄せる場合には、その人が日本のアメリカ大使館・領事館で面接を受けるのみなので、2店舗目の立ち上げの際には、比較的早期に戦力を備えることができるようになります。また、2店舗目のレストランが1店舗目のレストランの会社とは違う州にオープンする場合は、2店舗目をオープンする州に1店舗目の会社のForeign Corporationの登記(支店登記)を行うことにより、1店舗目の会社の会社登録を2店舗目の会社(支店)でも用いることができることになります。
  2. 別会社を設立する方法に関してですが、別会社を設立して、その会社で2店舗目のレストランを運営することは、一般的に、訴訟などのリスクヘッジになるためしばしば好まれます。ただ、この場合は、あなたの最初の会社で時間と費用を費やして取得した会社登録を使うことができず、新会社において日本のアメリカ大使館・領事館において最初から会社登録の手続きを行う必要があります。従って、2店舗目で就労可能な従業員を日本から呼び寄せるのに時間がかかってしまうことになります。

ただ、この問題の回避策としては、1店舗目の会社でE-2ビザを取得した人は、1店舗目の会社で、1カ月以上就労した後には、2店舗目の会社で働くことができるようになり、この場合に特別な申請手続きは必要ありません。ただし、この場合は、1店舗目の会社の50%以上の株式の所有者(会社)が2店舗目の会社の50%以上の株主である必要があります。あなたの場合は、日本の会社が1店舗目の会社と2店舗目の会社の両方の株式を全て(あるいは50%以上)を保有していれば、問題がありません。新店舗の立ち上げの際には、オープン前後に戦力となるスタッフが存在していることが重要だと言えます。この場合は、2店舗目の立ち上げに携わる従業員は、1店舗目の会社ですでにE-2ビザを取得している人、あるいは1店舗目の会社で新規にビザを取得した後、1店舗目の会社で1カ月以上就労した従業員のいずれか、あるいはその両方で2店舗目のレストランの立ち上げを行うことができることになります。

上記の1)の方法は、会社登録を用いることにより、ビザの取得期間が短くて済みますが、2)の方法に比べて、会社としてのリスクヘッジが弱いことになります。スピードとリスクヘッジのどちらを優先するかは、あなたの重要なビジネス判断になりますので、上記を参考に慎重に判断することをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2023/10/ 2

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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