Column

アメリカ移民法・ビザ申請の基礎

Updated on 2016/ 1/ 4

Vol.7 : グリーンカード取得までに子供が21歳を超えてしまったら

Q

私は現在、カリフォルニアのある日系の会社にH-1B所持者として勤めています。現在、この会社を通して、グリーンカードの申請を考えています。私は日本で大学を卒業した後、8年間日本の会社で働いてアメリカに来たので、グリーンカードは1年半程度で取得できると聞いています。ただ私には、こちらの大学に通っている息子がいて、もうすぐ21歳になります。私がグリーンカードが取れるまでに21歳になってしまうと、息子はグリーンカードが取れなくなるだけでなく、Hビザの扶養家族としての資格がなくなり、学生ビザに切り替えなければいけない(すなわち学費も上がる)とも聞いています。息子も含めてグリーンカード取が取れる良い方法はないのでしょうか?

A

まずあなたが、4年制大学を卒業していて、5年以上の職歴があれば(あるいは、職歴がなくとも修士号以上を取得していれば)、グリーンカードの申請における第2優先のカテゴリーに属し、通常よりも遥かに短い期間でグリーンカードを取得することができます。ただし、あなたのご子息が、21歳の誕生日までにグリーンカードが取得できない場合は、Child Protection Actの適用を受けることができるかどうかということが大きな問題となります。この点について、以下に述べさせて頂きます。

雇用を通してグリーンカードを申請する場合は、一般的に、第1段階として、労働局に Prevailing Wageがいくらであるかをリクエストした後、募集広告を掛け、労働局に労働認可証(Labor Certification)の申請を行い、その認可を受ける必要があります。この段階は、通常Prevailing Wage のリクエストから募集広告完了まで約3か月、労働局の審査に約2~4か月で、合計すると平均で約6か月を要します。ただし労働局からの監査(Auit)を受けてしまった場合(これは、一般的にランダムに行われる場合がほとんどです)には、さらに約4か月を要することになってしまいます。

次に、第2段階として、スポンサーである会社が、当該従業員(申請者)に労働局が定める規定の給料を払うだけの経済的能力があるかどうかが審査されます(通常I-140による申請と呼びます)。最後に、第3段階として、申請者自身が条件を満たしているか、犯罪歴・不法滞在歴がないかどうかが審査されます(通常I-485 による申請と呼びます)。

あなたの場合は、第2優先のカテゴリーにおいて申請可能なため、第3優先の場合と違って、上記の第2段階の申請(I-140)と第3段階の申請(I-485)を同時に移民局に行うことができます。Child Protection Act では、この時点(厳密にはI-485の申請を行った時点)で、子供が21歳に達していなければ、その後、グリーンカードの取得までどれだけの時間が経過しても、その子供も同時にグリーンカードが取得できると規定しています。すなわち、I-485 の申請を行った時点で、子供のグリーンカード取得条件である年齢を進める時計が止まると解釈されるわけです。従って、I-485 の申請後、I-485 が認可され、あなたがグリーンカードを取得した際に、ご子息が21歳以上に達していたとしても、ご子息も同時にグリーンカードを取得することができるわけです。

さらに、あなたの I-485 が何らかの理由で却下され、その後、不服の申し立て(Motion to re-open、Motion to re-consider)、あるいは上告(Appeal)を行い、その後認可を勝ち取ったような場合であっても、Child Protection Act の適用があるとされています。

従って、あなたの場合は、上記の Labor Certification をいつ取得できるかが重要な鍵になります。労働局からの監査を受けない場合なら、上述したように、平均で約6か月で Labor Certification の手続を終了するできる一方で、監査を受けてしまうと、合計で約10か月になります。従って、あなたの場合、この監査に掛かるか掛からないかも、ご子息が同時にグリーンカードを取得できるかどうかに影響するということです。万一、監査に掛かってしまい、Labor Certification が認可された時点で、ご子息が21歳の誕生日を迎えてしまっていれば、あなたと同時にグリーンカードを取得することはできなくなり、その場合、あなたがグリーンカードを取得した後に、家族申請、あるいはご子息が独自に申請することを考えなくてはならないようになります。従って、これからの申請を考えておられるのであれば、監査に掛かるか否かは、特殊な場合を除いてコントロールできないことであるとしても、Labor Certification 申請までの時間をできる限り無駄にしないように、申請するか否かを早期に決断されることをお勧めします。

注意事項 : コラム内で提供しているビザ・移民法に関する情報は一般的な情報であり、個人の状況や背景により異なる場合がございます。的確な情報詳細につきましては、移民法専門の弁護士にお問い合わせください。

Updated on 2016/ 1/ 4

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Columnist's Profile

CEO/Attorney
瀧 恵之瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

新潟大学法学部卒業。日本の法律事務所に勤務の後、インディアナ大学大学院卒業。20年以上に渡り、移民法の分野で活躍。常にクライアントの立場に立った柔軟なアドバイスが特徴。

瀧法律事務所 Taki Law Offices, A Professional Corporation

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