今回は、モンテッソーリ教育が「算数」を子ども達にどのように伝えているかについてお話したいと思います。
マリア・モンテッソーリが子ども達を観察しながら気づいたこと、それは 「子ども達は幼児期に算数に関する強い興味や関心を持つ」 ということでした。 子ども達は、自然に生活の中で数に関する活動をしています。 例えばお風呂で数を唱えたり、物の数を数えたり、おやつを友達と分けたりなどです。 このように、数の活動は幼い頃から身近にあり、算数の教育は幼児期から展開されています。
モンテッソーリの算数教育の重要な目的は 「数に対する概念の構築」 はもちろんのこと、「基本的な考え方、理論的な考え方を知る」 ことです。 幼児期において算数教育はとても意味があり、それを無理なく伝える為にも、子どもの発達のありかたを良く知り、楽しく導くことが大切です。 幼児期の発達は、感覚器官と運動器官に関してとても特別な特徴があります。 子どもは大人と異なり、“動き” を通して体験しながら概念を構築していくのです。 数の概念も同様で、視覚や触覚を使い、実際に数の活動を通しながら概念を理解していきます。
モンテッソーリの算数教育では、子どもたちはたくさんの教具を使って量を体感していきます。 量というのは数値化されている物体です。 例えば下記の写真にある青と赤の色分けされた棒は 「算数棒」 と呼ばれる教具で、子ども達はその値の違いを視覚によっても触覚によっても体験することができます。
まず数についてご説明します。 数は3つの方法で表現されます。
- 量 (ビーズなど)
- 数詞 ( 「せん」 や 「いち」 などのことば)
- 数字 ( 「1000」 「1」 などの表記
この3つを理解して初めて、数の概念を理解したと言えます。 例えば1000であれば、1000の量をイメージでき、1000という言葉を話し、1000と書くことができたときに1000を知ったことになります。 このことから、紙の上で数字の計算ができるようになるだけでは 「数の概念を学んだということにならない」 ことが理解していただけると思います。
またモンテッソーリの算数教育は、概念を深く理解をしていくために教具とプロセスに工夫が凝らされています。 その様子については次の写真をご覧ください。
量の体験
具体から抽象へのプロセス
1つの教具に1つだけの概念
教具の特徴としては、1つの教具に概念を1つだけ含むことにより、子ども達がよりわかりやすく活動できます。
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- (写真7)平方のビーズは 「スキップ数え」 の導入の教具です。感覚的に数が5つずつ増えていく様子がよくわかります。
- (写真8)セガン板11から20までの数字の概念の紹介です。 『 「11」 は 「1」 と 「1」 ではなく、「10」 と 「1」 だ! 』 と気が付いた瞬間です。
算数教育に入る前に大切なこと
実際の算数教育を始めるにあたり、その時点で子ども達にある程度の基盤や基礎知識がついていなければ、数概念は理解できません。
- ○コントロール (写真9)
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算数の教具を自由自在に扱うためには、しっかりと自分の体を思い通りに動かすことができなければなりません。 大好きな日常生活の練習で行った洗濯も、自分で体をコントロールし、興味のある事に向かって集中力を注ぐことで、しっかりと算数教育にも役立っていきます。
- ○順序性と同一性の理解 (写真10)
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大きいものから小さいもの順序性がわかることも大切です。 モンテッソーリは、知性の原点とは 「同一性」 と 「区別」 を見つけることだと言っています。 理論的な考え方を構築するためにも、同一性、順序性などの知的な考えを引き出し、操作することでより知性が引き出されるのです。
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好奇心からくる活動を展開させたいと望む意欲が大切です
興味や探究心が学習の基本です。 このような活動を子ども達が始めたとき、知性によって動かされていると言います。
相良敦子先生は、著書 「お母さんの敏感期」 の中で 『知性の働きは子どもの自発的な好奇心を高めます。 子どもは知性を働かせるときにとても自発的になり、深い充実感で生き生きと活動を展開させます。 2歳のお誕生日をむかえた子どもが同じカップを砂場の中から見つけ出し嬉しそうに 「同じ!」 と言いもってきます。 それは知性の芽生えの瞬間です』 と述べています。
モンテッソーリの算数は、子どもたちの発達に適した無理のない状態で進んでいくもので、子どもたちの大好きな活動でもあります。 このように、算数の概念の構築はすぐに起こるものではなく、幼児期の生活に基づいて発達し展開していくのです。