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心のケアと癒しに役立つ臨床心理のここだけのお話

Updated on 2023/ 6/ 26

Vol.22 : 依存症とは⑤ 治療法「ソーシャルサポート」

メンタルヘルスにおける「依存(アディクション)」は、不安やうつなどの障害を引き起こす要因になったり、悪化させたりすることがあります。現代は依存も多様化しており、自覚がないままいつの間にか依存状態になっていることもあります。依存のメカニズムや種類、治療法などについてシリーズでお届けします。

依存症の治療法とは

依存症の治療法には2種類あり、「セルフケア」については前回のコラム「依存症とは④治療法『セルフケア』」でご説明致しました。今回は「ソーシャルサポート」についてお伝えします。

信頼できる人を見つける

「ソーシャルサポート」とは、周囲の支援を受けること。家族や友人、そしてカウンセラー、セラピストなどのメンタルヘルスのプロフェッショナルも含まれます。「セルフケア」では自分で自分のケアをしますが、依存症の内容や症状によっては、周囲のサポートが必要になることがあります。まず、苦しい時に誰に相談したらよいのかを考えてみましょう。家族や友人などの中から信頼できる人を見つけることができればよいですが、もし難しいようならカウンセラーに相談することを検討してみるのもよいと思います。

プロによる治療のメリット

プロによる治療と聞くと、敷居が高いと感じる人もいると思いますが、メリットの1つとして、メンタルヘルスに特化した専門家は、患者さんが依存している状態からゴールを決めてそこに向かうように一緒に道のりを設定し、治療を進めていくことが可能です。

また、依存症の治療では、主に患者さんの思考や感情に焦点を当てることが多いです。心理的な要因で最も大きいのは「罪の意識」「恥の意識」です。これらはとても繊細な感覚なので、身近な人に話すのはつらいこともあります。特に家族で何とかしようとしていると、助けたいのに責めたりダメ出したりしてしまうこともあるのです。なぜ依存症になってしまったのかを周囲に理解してもらえると、治療において良いサポートになるのですが、自然にそれができるケースはなかなかありません。

人が変わる段階

人が変化する段階にはいくつかあり、まずは「気付く」こと。その際、「だから私はダメなんだ」といった自分に対する批判や判断は一切入れません。ただ、「こんなことが起こっている」という事実に気付くことです。気付きがあると、自分がどんな考えを持っているかが分かります。気付くことで疑問を持ち、自分を変えようと「決心」し実際に行動します。それがうまくいったら続けていく。これが人が変化していく段階で、自分が依存の中でどこにいるのかの目安になります。プロによる治療にはさまざまありますが、こういった内なる変化の段階について理解しながら進めていくのは、身近な人に相談するよりも大きな効果を生むこともあります。

薬物は早期の治療が大切

最後に、薬物やお酒のような依存症の治療法についてお話致します。他の依存症と比べて、身体的な影響が大きいのが特徴です。例えば、自分で薬物を止めようと思って突然使用を停止すると、“コールドターキー(鳥肌が出るほどの悪寒に襲われることから)”と呼ばれる禁断症状が出て命に関わる事態になることもあります。早期から専門家のサポートが必要なケースが圧倒的に多い依存症だと言えます。

薬物やお酒などの治療は、一般的に以下のような手順を踏みます。
入院(ERや病院)
専門の施設で治療
通院
自宅治療
外来治療

依存症にかかっている本人では判断ができず、家族や友人を介して入院するケースも多いです。
決して1人で悩まずに、まずは信頼できる人に相談してください。

Updated on 2023/ 6/ 26

皆さんのご意見、ご相談等ございましたら以下までご連絡ください。

info@internationallifecycle.com

Columnist's Profile

インターナショナル ライフサイクル ファミリーセラピーInternational Lifecycle Family Therapy Inc.

CA州心理士免許(LMFT)と博士号を持つ経験豊かな2人のセラピストによる心理カウンセリングオフィス。多くの方々のより良い心の健康を目指し、個人、カップル、家族の心理セラピー/カウンセリングを日本語および英語で提供している。仁科盛次郎(心理療法士、LMFT#50945)および菱谷有希子(心理療法士、LMFT#53262)はCA州公認のマリッジファミリーセラピストで、専門は家族・カップル間のコミュニケーション、異文化や多文化における問題、思春期における心理やアイデンティティ問題、薬物依存治療など。多種多様な家族療法を取り入れたアプローチや、物の見方を変え解決方法の発見へと導くアプローチ、催眠療法などの潜在意識セラピーを提供。また、両者ともに移民難民、性犯罪にかかわる青少年更生、薬物リハビリテーション施設での経験を持つ。大学院講師としての活動及び後輩育成にも精力的に取り組んでいる。Youtube「カリフォルニアから心の癒しチャンネル」にて心にまつわるビデオ公開中。

International Lifecycle Family Therapy Inc.

1101 South Winchester Blvd. Suite P-296 San Jose, CA 95128

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