日本もアメリカも歯科診療に関して学問的には何ら変わりのないものである。しかしながら両国の歯科医療には絶対的な違いがある。その歯科医療の違いを最も位置づけるものは保険制度の違いによるものである。
日本ではほとんどの場合、国が歯科診療を負担するのに対して米国ではプライベートな保険購入が必要となる。両者にそれぞれメリット、デメリットがあり、一概にどちらがよいと決めるのは難しい事である。個人的には患者の歯のコンディションを一貫して見ることの出来る米国のシステムの方が日本のものより私は気に入っているがこれは患者さんのニーズによっても異なるはずである。日本の歯科医はその多くが一日30人相当の患者を診察をするのに対して米国では平均的に8人~10人ほどである。つまりより多くの時間を一人の患者さんに費やす事が可能な訳である。通常米国では初診時に患者さんの同意の下、全ての歯の検査を行い一貫した治療計画をたてそれを基に治療を進めていきます。その際全部の歯のレントゲンをとり記録としても残します。患者さんも自分の虫歯の状況などを常に把握する事とが出来るのでメリットがあります。このような一貫した診療方法は日本では自費診療を希望した場合のみ行われ保険診療ではこのような診療方式をとることは通常ありません。誰でもが気軽に歯医者にいって虫歯治療を出来る日本のいい制度ではありますがその反面残念ながら日本では国が代価を支払わないあるいはその代価があまりにも低く設定されている治療ではクオリティーの良い治療は期待が出来ません。日本は悪くなった歯を治療する「治療型」あるいはどうしようもなくなった歯が抜けるまでもたせる「もたせ型」の歯科診療であるのに対して米国は「予防型」でありまた予後の悪い歯は「積極的に処理」をするといったスタイルの歯科診療です。この「もたせ型」診療にはいくつかの問題点もあります。