脳震とう (Concussion)
脳震とうは、外傷によって起きる脳のケガの事です。 別名は外傷脳傷害 (TBI Traumatic Brain Injury) で、外傷にはスポーツの練習の最中、試合中に頭をぶつけたり、転倒したり、選手同士で衝突するなどがあります。 さらに交通事故でフロントグラスやサイドグラスに頭をぶつける、またムチウチ症のように激しく頭を振られてケガをすることもあります。
もうひとつ、ムチウチ症のような感じなのですが、シェーキングベイビー症(Shaking Baby Syndrome) と言って、赤ちゃんを抱き上げて上体と頭を激しく振ってしまう事によっても外傷脳傷害 (TBI Traumatic Brain Injury) は起こります。
【症状】
- 頭痛がしたり、頭に圧力を感じる
- 一時的な気絶
- ケガをした時の記憶が喪失する。 記憶がかすんだようになる
- めまいや星が見えたりする
- バランス障害
- 耳鳴り
- 吐き気、嘔吐
- 疲労感
- 言葉が不明瞭になる
- 後日になってから記憶障害や集中力障害が起こる
- イライラ
- 人格の変化
- 光や音への過敏症
- 睡眠障害
- 味覚、臭覚障害
- 歩き方が不安定
また下記のような症状があったらすぐに病院に行ってください。
- 1分以上気を失う
- 繰り返し嘔吐する
- 発作症状
- 顕著な運動機能の異常、精神機能の低下
- 症状が時間と共に悪化する
【原因】
人間の脳は硬いゼリーのようなもので、これが脳髄液の中に浮いているのです。 もし頭をぶつけたり、強く叩かれたり、ムチウチ症のようにはげしく振られたりすると、脳は頭蓋骨の中で激しく動き、あちこちにぶつかってケガをしてしまいます。 脳はケガをしたときにすぐ腫れあがり損傷を起こします。 これが脳震と言われるものです。
【危険要因】
- 衝突や頭へのケガの危険性の高いスポーツに参加している (フットボール、ホッケー、サッカー、ボクシング、空手など)
- 交通事故
- 頭に暴行を受けた事がある
- 転んで頭を打った事がある
- 以前に脳震とうを起こしたことがある
【併発症】
- 脳震とうを起こした後、5年間はてんかん症を併発する危険性が2倍になる
- 複数回脳震とうを起こす事で、脳へのダメージが蓄積してしまい、脳機能を大きく退化させてしまう
- セコンドインパクト症候群 (Second Impact Syndrome)
セコンドインパクト症候群 (Second Impact Syndrome)
もし最初の脳震とうの症状が完全に治りきらない間に、もう一度脳震とうを起こしてしまうと、脳が大きく腫れてセコンドインパクト症候群 (Second Impact Syndrome) を起こしてしまいます。
脳震とうを起こすと、脳内の化学物質に変化が起き、これが元通りになるのは1週間以上かかります。この不安定なときにスポーツなどのアクティビティーによって頭を打ったり、転んだりして脳震とうを起こすと、脳が急激に腫れてしまい死に至る事もあります。
たとえばお子さんがスポーツの試合や練習中に脳震とうを起こした場合、すぐにでも戻りたい気持ちは分かるのですが、このセコンドインパクト症候群 (Second Impact Syndrome) が起こらないように、くれぐれも注意が必要なので、いつ試合や練習に戻れるかは、コーチの意見ではなく医師やカイロプラクターなどの専門家の見解に従ってください。
どのようなスポーツが頭部へのケガをしやすいか下記に示しました (これは2009年に起きた件数の統計です)。
1. |
サイクリング |
85,389 |
2. |
フットボール |
46,948 |
3. |
野球、ソフトボール |
38,394 |
4. |
バスケットボール |
34,692 |
5. |
水中水上スポーツ |
28,716 |
6. |
エンジンつきの乗り物 |
26,606 |
7. |
サッカー |
24,184 |
8. |
スケートボード |
23,114 |
9. |
ジムでのエクササイズ |
18,012 |
10. |
雪上スポーツ |
16,948 |
11. |
乗馬 |
14,466 |
12. |
体操、ダンス |
10,223 |
13. |
ゴルフ |
10,035 |
14. |
ホッケー |
8,145 |
15. |
球技 |
6,883 |
16. |
トランポリン |
5,919 |
17. |
ラグビー、ラクロス |
5,794 |
18. |
アイススケート |
4,608 |
19. |
ローラースケート |
3,320 |
次の統計は14才以下の子供たちがケガをするスポーツのTop10です。
1. |
サイクリング |
40,272 |
2. |
フットボール |
21,878 |
3. |
野球、ソフトボール |
18,246 |
4. |
バスケットボール |
14,952 |
5. |
スケートボード |
14,783 |
6. |
水上スポーツ |
12,843 |
7. |
サッカー |
8,392 |
8. |
モーターつきの乗り物 |
6,818 |
9. |
雪上スポーツ |
6,750 |
10. |
トランポリン |
5,025 |
脳震とうの約半分は、子供たちに起きています。 また脳震とうの10件に1件は意識を失います。 ほとんどの脳震とうは気絶をしないので軽く見られがちですが、セコンドインパクト症候群 (Second Impact Syndrome) の危険性を上げることになりますので要注意です。 また脳震とうの症状は、90%の確率で7日から10日で治るのですが、10%から20%のケースでは、実に12ヶ月も症状が続く事もあります。 そのため早く試合や練習に戻してしまうとセコンドインパクトの危険を高めてしまうことになります。
スポーツによる脳震とう、頭部へのケガはどうなっているのか
現在、年間約30万件の脳震とうが起きています。 また脳へのケガはスポーツにおける事故死のNo.1の原因です。 90%のボクサー、そして50%のサッカー選手は頭部にケガを負っています。
- ○サイクリング
- 毎年約50万人が、自転車関係の事故によって病院行きになり、内8万5千人が頭をケガし、600人ほどが亡くなっています。 これらの事故の内85%が、ヘルメットを着用していれば防げるケガでした。 5才から14才の子供の内、50%がヘルメットを持っていて、そのうち25%が自転車に乗るとき、必ずヘルメットを着用すると答えたデータがあります。 自転車事故での9割近くがヘルメット着用により防ぐ事が出来ます。 必ず着用してください。
- ○ボクシング
- プロボクサーのパンチは、13ポンドのボーリングボールが、時速32キロのスピードでぶつかってくるのと同じ威力です。 15%から40%の元ボクサーが慢性的な脳傷害の症状を持っていると言われています。
- ○スキー、スノーボード
- 全体の約15%が頭部にケガを負っています。 ヘルメットの着用により、大部分のケガが予防可能なので、必ずヘルメットを着用してください。
- ○サッカー
- 上体と頭部の接触衝突による脳震とうが、ケガの50%を占めており、なかでも女性のプレイヤーの危険度は大きくなります。 子供たちはヘディングを行わないほうが安全です。 大学レベルの選手で、約60%が1シーズン中に、1回以上の脳震とうを経験していると言う統計があります。