動物も人間もストレスに同じように反応します。 体の中ではほぼ同じ生化学反応が起こり、それに従って一定の生理現象が発生します。 これをストレス反応 (Stress Response) と言います。
ストレスには急性と慢性のストレスがあります。 慢性のストレスは体へダメージを残します。 その理由は後記いたしますが、急性のストレスは物事を正確且つ素早く行う為に必要なものなので、生きて行く上でとても大事な現象です。 人間と動物のストレス反応の大きな違いは、人間は考えること、つまり精神的な要素によってもまったく同じストレス反応をおこすというところです。
仮にあなたがウサギだとしましょう。 狼に狙われて今まさに獲物になりかけているとします。 この時点でウサギは一連のストレス反応をおこし足の筋肉に血液を送り早く走れるように用意をしながら脳を活性化し、素早く反応できるようにします。 そして狼が襲ってきた瞬間にいつでも逃げれるように用意をしているのです。 この様に動物は実際の身体の危機のみにストレス反応をおこしますが、人間はこの体の危機はもちろん精神的な要素によっても、同じストレス反応をおこすのです。 例えば 「明日大勢の人の前でスピーチをしなければならない」 と言う状況になった場合、前記とまったく同じストレス反応をおこします。
ここでストレス反応がどの様なものなのかお話しようと思います。
人間のストレス反応は2つの機能によっておきています。
- 1. 神経組織
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体の全ての機能は大脳によって支配されています。 基本的な機能は主に自律神経が動かしています。 自律神経は交感神経と副交感神経という2つのパートに分けられます。 交感神経がストレス反応をコントロールし、副交感神経が消化機能や睡眠など落ち着いた平静な状態をコントロールしています。
- 2. 指令を伝達する為にホルモンを放出する機能
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ホルモンは脳から出される化学的なメッセンジャーです。 これが視床下部 (Hypothalamus) に分泌され脳下垂体 (Pituitary Gland) に指令が行きます。 さらに副腎 (Adrenal Gland) にこの指令が伝達されアドレナリン又はエピネフリン (これらを Glucocorticoid といいます) というホルモンが体中に行き渡り交感神経を刺激し活動を活発にしてストレス反応をおこします。
交感神経は下記のような働きをします。
- 瞳孔の拡張
- 唾液などの分泌を抑制
- 心拍数を上げる
- 胃腸など、消化器官の働きを抑制
- 副腎を刺激してホルモン分泌をする
- 膀胱の筋肉をリラックスさせる
それでは、体の器官ごとにストレス反応による、グルココーティコイドの分泌がどのような影響を与えるのか、またどのような病気に結びつくか考えてみましょう。
- 1. 心臓
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グルココーティコイドがストレス反応によって分泌されると、交感神経が刺激されオンの状態になり副交感神経がオフの状態になります。 そうすると心拍数も血圧も上がります。 これにより酸素が体中に素早く大量に送られます。 これはあらゆる緊急状態に対応する様に筋肉や肺などの機能を活発にする為です。 さらに消化器、生殖器など必要の無い器官への血液の循環を抑えてしまいます。 短時間のストレス反応であればいいのですが、これが慢性的に続くと一時的に血圧が上がってしまい高血圧症になってしまいます。 長期に高血圧が続くと血管に負担がかかり血管の筋肉が肥大して血管壁が硬くなってゆきます。 これが動脈硬化です。 心臓も筋肉の塊ですので負担がかかりすぎると壊れてしまいます。
- 2. 新陳代謝
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新陳代謝というのは食べて消化した栄養分を吸収してエネルギーとして使い、余ったエネルギーは体に貯蔵することを言います。 この貯蔵したエネルギーを取り出して使用するときに必要なホルモンがインシュリンです。 急性のストレスを受けた時は、筋肉が動くためにエネルギーが必要になります。 この時、インシュリンが分泌され貯蔵したエネルギーを分解し、血液中に栄養素を送り出して体が使用できるようにするのです。 ところが、ストレスが長く続くとグルココーティコイドが分泌されたり、それが続くとインシュリンに対して抵抗性をつけてしまい反応をしなくなってしまいます。 そして、メタボリック症候群や心臓病を引き起こしてしてしまいます。
- 3. 成長
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子供は慢性的なストレスがかかる状態にあると、成長のスピードが遅くなります。 ストレスがある状態では、グルココーティコイドが分泌され交感神経が刺激されています。 それにより成長ホルモンが抑制されしまいます。 さらに消化器官も血行が下がり機能が低下しますので、栄養の吸収が低下します。 極端な例になると、ストレス性の小人症という成長の完全停止もおこる可能性も有ります。
- 4. 免疫
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免疫はストレスによってどの様な影響を受けるのでしょうか。 まずストレスは免疫と一体どの様に働くのかを最初に考えてゆきたいと思います。 免疫の働きはとても複雑なので一番中心の働きを説明してみましょう。 免疫はTセルとBセルという細胞を使い、外部から入り込んだ病気の元であるバクテリアやウィルスを発見し退治します。 Bセルはいつも体の中をパトロールして病原菌や異物を発見します。 発見しだいTセルを呼び寄せて撃退します。 この免疫機能にストレスが加わったらどうなるかというと、ストレスにより免疫は繰り返し刺激され過剰に働くようになってしまうのです。 終いには自分の体の組織を攻撃するようになってしまいます。 この様な病気を自己免疫疾患 (Autoimmune Disease) と言います。
- 5. 学習能力、記憶
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この学習能力、記憶に関係が深い脳の部分は海馬 (Hippocampus) と言います。 急性のストレス=軽度の緊張は心拍数を上げ血液を脳へ沢山送り必要な酸素やブドウ糖を補給して脳 (特に海馬) の機能を活発にしてプラスに働きます。 ところがストレスが何時間も続くようになると十分な量の酸素やブドウ糖を脳に送れなくなり脳の不活性化を促してしまいます。 さらに長くストレス続くようになると脳細胞な退化を招き破壊をしてしまいます。
「自分は仕事をしていないからストレスはないはずなのに…」 と言われる方がいますが、本当にそうでしょうか? ストレスと言うのは人生の危機状態や悲しいことに対してだけではなく、バケーションなどのように楽しいイベントにおいても発生いたします。
ストレススケールというものがあります。 これはストレスが体に与える度数を数字で表したものです。 一番有名なものに、二人の精神分析医によって1967年に作られたH& Rストレススケールというのがあります。 少し古いのですが参考までに書いておきます。
H&Rストレススケール
1年間の間にどのくらいストレスが溜まるのか下記を参考に計算してみて下さい。
- * 300点以上=病気になる危険性がとても高い
- * 150~299点=病気になる危険性が中度くらい
- * 150点以下=病気になる危険性が低い
人生の出来事 |
点数 |
配偶者の死 |
100 |
離婚 |
73 |
別居 |
65 |
牢屋に入る |
63 |
親戚、家族の死 |
63 |
ケガ |
53 |
結婚 |
50 |
失職 |
47 |
離婚調停 |
45 |
退職 |
45 |
家族の病気 |
44 |
妊娠 |
40 |
性機能障害 |
39 |
新しい家族が増える |
39 |
仕事が変わる |
39 |
経済状態の変化 |
38 |
友人の死 |
37 |
職種が変わる |
36 |
口論の回数の変化 |
35 |
多額な負債 |
32 |
抵当流れ |
30 |
職場での責任の変化 |
29 |
子供が家を離れる |
29 |
姻戚関係との問題 |
29 |
ずば抜けた功績を成し遂げる |
28 |
配偶者が仕事を始める、又は終える |
26 |
学校の始まりと、終わり |
26 |
生活環境の変化 |
25 |
生活習慣の修正 |
24 |
上司との問題 |
23 |
働く時間、コンデションの変化 |
20 |
住居を変わる |
20 |
学校を変わる |
20 |
教会活動の変化 |
19 |
社交生活の変化 |
18 |
中程度の負債、ローン |
17 |
睡眠習慣の変化 |
16 |
食習慣の変化 |
14 |
バケーション |
13 |
軽い違法行為 |
10 |
人生の出来事 (未成年用) |
点数 |
未婚での妊娠 |
100 |
両親の死 |
100 |
結婚 |
95 |
両親の離婚 |
90 |
未婚の父になる |
70 |
1年以上の禁固刑 |
70 |
両親の別居 |
69 |
兄弟、姉妹の死 |
68 |
友人関係の変化 |
67 |
未婚の姉妹の妊娠 |
64 |
養子であることを発見した |
63 |
両親の再婚相手との関係 |
63 |
親友の死 |
63 |
先天的な欠陥、不具を持っている |
62 |
入院するほどの病気をする |
58 |
学校を落第する |
56 |
学校の課外活動が出来ない |
55 |
両親の入院 |
53 |
30日以上の禁固刑 |
53 |
ボーイフレンド、ガールフレンドとの別れ |
53 |
初デート |
51 |
停学処分 |
50 |
薬物、アルコール依存症 |
50 |
新しい兄弟、姉妹の誕生 |
50 |
両親との議論の増加 |
47 |
両親の失職 |
46 |
ずば抜けた個人的な功績 |
46 |
両親の経済状態の変化 |
45 |
志望大学への合格 |
43 |
高校4年生であること |
42 |
兄弟、姉妹の入院 |
41 |
両親があまり家にいない |
38 |
兄弟、姉妹が家から出てゆく |
37 |
正規の教会のメンバーになる |
31 |
父親、母親が働き始める |
26 |
いかがでしょうか? このリストを見るだけでもおわかりになったかと思いますが、人はストレスとと共に生活していると言えるでしょう。
皆さんにとって、今年はどのくらいストレスが溜まった一年でしたでしょうか?
ストレスは生きてゆくためには大事な反応ですが、過剰に溜め込み過ぎると健康を害することになります。
ストレスを発散・解消をするようなアクティビティ、例えば定期的なエクササイズなどをして汗をかくのはいい事です。 プラス何か達成感を感じられるアクティビティをすることを心掛けると良いでしょう。 さらに言うと、背骨の健康が脳の健康に繋がるということはご存知ですか?何をしてもストレスが発散されないという方には、 カイロプラクティックケアをお試ししてみてはいかがでしょうか?
カイロプラクティックは外的刺激によって病気を治し健康を取り戻してゆく医学です、背骨の調整、エクササイズの指導、脳、体の鍛え方などにより健康な体を作ってゆきます。
私達カイロプラクターは体の調子を整えこれにより体、脳のストレスを軽減してゆきますので薬物に頼るより安全に健康を取り戻して行けると思います。