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本展では、これらの収蔵品より、『世界』と『暮しの手帖』、ふたつの雑誌のカット原画をご紹介します。おなじ時代を異なるかたちで歩んだ二誌の展開、そしてカットという表現にたしかにうかがえる、それぞれの描き手の魅力をご覧ください。
終戦後まもなく、それまで抑圧されていた言論が活気を取り戻しつつあった頃、雑誌の創刊や復刊も相次ぎ1946年に岩波書店より雑誌『世界』が、1948年には暮しの手帖社より雑誌『暮しの手帖』(当初は「衣裳研究所」より『美しい暮しの手帖』として)が創刊されました。
『世界』は、岩波書店の創業者である岩波茂雄(1881年-1946年)の意志のもと、『君たちはどう生きるか』(1937年、初版は新潮社)の著者でもある吉野源三郎(1899年-1981年)を編集長に創刊された総合誌です。戦後日本の変化の激しい時代に、一貫して、日本の講和や安全保障、日韓問題、沖縄などの平和に関する問題を扱ってきました。また、志賀直哉「灰色の月」、安部公房「第四間氷期」をはじめ、文壇での主要な文芸作品が扱われたり、大江健三郎、中村雄二郎、山口昌男を中心に編纂された論集『叢書 文化の現在』(全13巻、1980年-1982年、岩波書店)へつながる議論が展開されるなど、文化的に重要な記事が多数掲載されてきた雑誌でもあります。
いっぽう『暮しの手帖』は気鋭の服飾評論家であった花森安治(1911年-1978年)が大橋鎭子(1920年-2013年)と共に創刊した生活総合誌です。戦争の影響で物資の少なかった当時、生活に役立つアイデアを発信する雑誌としてはじまり、人々の暮らしが大量生産・大量消費型へ変化してからも、商品を実際に使用しデータを掲載した企画「日用品のテスト報告」などの良質な情報を提供し続けました。花森は自ら、原稿の執筆、取材や撮影、誌面レイアウト、表紙画、宣伝広告のデザインまですべての制作過程に携わりました。ともに日本の出版文化に大きな影響を持ち、今日まで続く雑誌です。
近年、世田谷美術館では、岩波書店より『世界』カット原画、暮しの手帖社と土井藍生氏より花森による『暮しの手帖』カット原画の寄贈をいただきました。『世界』では、中川一政や加山又造、駒井哲郎、飯田善國、宇佐美圭司、加納光於など、洋画、日本画、版画、彫刻、現代美術と、日本の近現代美術を牽引してきた多様な作家が起用され、それぞれに個性あるカットを寄せています。『暮しの手帖』では創刊号よりほとんどすべてのカットを花森が手掛け、バラエティ豊かな画風で誌面を彩りました。
本展では、これらの収蔵品より、『世界』と『暮しの手帖』、ふたつの雑誌のカット原画をご紹介します。おなじ時代を異なるかたちで歩んだ二誌の展開、そしてカットという表現にたしかにうかがえる、それぞれの描き手の魅力をご覧ください。
主催:世田谷美術館(公益財団法人 せたがや文化財団)
協力:株式会社 岩波書店、株式会社 暮しの手帖社
Venue | 世田谷美術館 2階展示室 |
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Address | 世田谷区 |
Date | 2023/8/31 - 2023/11/18 |
Time | 10:00 minute(s) - 18:00 minute(s) |
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